監修していただいた先生
〇テッツ犬猫病院 院長 大角哲也先生
〇ペットケアアドバイザー 岸美加子先生
絶対に犬に食べさせてはいけない食べ物と理由は?
私たち人間が普段から食べている食べ物でも、犬にとっては命に関わるものがあります。一般的には「ぶどう・レーズン」「チョコレート」「玉ねぎ」「香辛料」などがよく知られている食べ物です。では、なぜこの食べ物を犬には食べさせてはいけないのか見ていきましょう。
ぶどう・レーズン
【事例】日本小動物獣医学会誌
3歳・オス・体重2.5kgのマルチーズが、種なし小ブドウ約70グラムを食べた5時間後から嘔吐と乏尿を訴え、ブドウ摂取4日後に死亡したという事例があります。
犬がぶどうを食べると「ぶどう中毒」を起こしてしまい、最悪の場合には腎不全になってしまい、重症化する可能性があります。
チョコレート
チョコレートの主成分である、カカオには、テオブロミンといった化学物質が含まれています。これらは、過剰摂取すると呼吸速迫、流涎、興奮などの中毒症状を起こします。また、チョコレートの油脂により下痢や嘔吐などの症状が起こることもあります。
玉ねぎ
犬にタマネギを大量に与えてしまうと、溶血性貧血が起きたり血尿が出たりします。これは、たまねぎに含まれる成分が溶血作用(赤血球を溶かすこと)を起こすことが原因です。この成分は加熱しても破壊されないため、タマネギを使った料理を与えると危険です。
コンソメなどスープのだしにも大量に使用されている場合があるので注意しましょう。また、タマネギの入った味噌汁のおつゆなども(タマネギそのものではなくゆで汁も)与えないほうが懸命です。
犬の体重1kgあたり、タマネギ15〜20gを与えると、貧血を起こすといわれています。食べたら即死亡というわけではありませんが、十分注意してください。
香辛料
香辛料は、人間にとって食欲増進や臭み取りなど欠かせないものですが、犬にとっては胃を刺激してしまう物です。胃を刺激し続けると、下痢の原因になってしまいます。また、肝臓や腎臓にも負担がかかります。
犬はそもそも嗅覚が強いため、香辛料などの刺激物は自ら食べる事はほとんど無いのですが、誤って食べてしまうことがあるかもしれません。日頃から十分に注意しましょう。
種類別 食べさせてはダメなもの
一般的に知られている食べさせてはダメな食べ物についてご紹介しましたが、他にはどのようなものが食べさせてはいけないのでしょうか。今回は種類ごとに分けてご紹介します。
果物
レモン
レモンといえば、ビタミンCが豊富として知られています。
しかし、犬にとってはレモンの強い酸は刺激物となります。その刺激により、犬の体質によってはお腹を壊してしまうこともあるのです。ぶどうのような中毒性はありませんが、消化不良や下痢、嘔吐を引き起こす恐れがあるので気をつけましょう。
その他…グレープフルーツ、すだち
野菜
ネギ
ネギには、アリルプロピルジスルフィドという有毒成分が含まれています。これは玉ねぎと同様、赤血球の膜を破壊し、溶血(赤血球を溶かすこと)を起こします。つまり赤血球が破壊されることで、急性の貧血や、赤血球が使えなくなることにより酸素不足などの中毒症状を引き起こすのです。
その他…ニラ
にんにく
にんにくもネギ類の一種なので、「玉ねぎ中毒」を起こす食材となっています。
※玉ねぎ中毒は犬種により症状が出る場合と、出ない場合があります。
豆類
ピーナッツ(落花生)、アーモンド、大豆、ピスタチオといった豆(ナッツ)類は、中毒例がある程度出ているので基本的にやめたほうがよいです。
豆(ナッツ)類は消化に悪いことから、消化不良や嘔吐、下痢の原因となってしまいます。
また、生の「大豆」にはトリプシン・インヒビターという物質が含まれ、この物質には毒性があるとされています。これを大量に摂取すると下痢・嘔吐・消化不良・アレルギー・鼓腸症などを引き起こす恐れがあります。
魚介・海藻類
海苔などの海藻類はマグネシウムの量が多いため、ストルバイト結石を作ります。ですから、犬に与えるべきではありません。イカ、タコ、カニ、エビ、貝類は消化不良を起こしやすいため与えないでください。
乳製品
牛乳にはたくさんの栄養素が含まれていますが、その中に乳糖(ラクトース)という成分があります。犬は乳糖を体内でうまく消化できないため、下痢を起こす恐れがあります。そのため、一般的に市販の牛乳を与えない方が良いです。犬用のミルクであれば、飲ませても大丈夫です。
飲み物
コーヒー
コーヒーにはカフェインが含まれており、これを摂取しすぎると興奮状態や嘔吐・下痢・痙攣・呼吸困難などの原因に繋がります。
最悪の場合、命に関わる事態となってしまいます。またカフェインは中枢神経を興奮させる作用があるため、てんかんの発作や痙攣を起こしたことのある犬は特に注意が必要です。
緑茶
緑茶には「カフェイン」「シュウ酸」「緑茶ポリフェノール(カテキン・タンニン)」などの、成分が含まれています。人間には健康効果が期待できる緑茶ですが、犬にとっては危険な成分が多く含まれているのです。
◆カフェイン・・・犬に異常な興奮やけいれんを引き起こす可能性がある。
◆シュウ酸・・・結石の原因になる。
◆緑茶ポリフェノール・・・食欲不振や下痢などの中道症状を引き起こし、犬の体に蓄積し続けると肝臓に大きな負担を与える。
同様にウーロン茶や紅茶にもカフェインが含まれているので、注意してください。
ビール
ビールはもちろんのこと、焼酎・ワインなどのアルコールが入っている飲み物は全て犬にとって有害です。アルコールは体内に入ると中枢神経に作用し、人間でいう酔っぱらったという状態になります。人の場合、肝臓でアルコールを分解しますが、犬はそれができません。もし多量に摂取してしまった場合、呼吸困難になってしまい、やがてそのまま昏睡状態に陥ってしまい、最悪の場合死に至ってしまう事もあります。
安易な考えで与えるのは非常に危険なので、やめましょう!
その他
生卵
生卵の白身には「アビジン」という物質が含まれており、アビジンは低分子のたんぱく質ですが、ビオチン(ビタミンB7とも呼ばれる水溶性のビタミン)の吸収を抑制してしまいます。
その結果、ビオチン欠乏症(食欲低下・成長遅滞・皮膚炎)になる恐れがあります。「アビジン」は、熱で変性するため、犬に卵を与える時は、加熱をして与えてください。
こんにゃく
こんにゃくは人間にとっては食物繊維が豊富ですが、犬にとっては非常に消化に悪い食べ物です。そのため、シュウ酸カルシウム結石を起こす危険性があります。
また、こんにゃくはアレルギーを起こす食材でもあります。以下の症状などが見られる場合は、アレルギーが疑われます。その時には必ず獣医師に相談しましょう。
・体を痒がる
・目の充血
・嘔吐や下痢
食べさせていいもの
次に食べさせてもいいものをご紹介します。
ただし、犬によってはアレルギーを起こしたり、過剰摂取により、体調が悪くなる場合があるので、少しずつ様子を見ながら与える必要があります。
果物
〇バナナ
〇みかん
〇いちご
〇りんご
〇メロン
〇キウイ
〇パイナップル
〇ブルーベリー
〇柿
〇梨
野菜
〇トマト
〇レタス
〇セロリ
〇パセリ
〇もやし
〇ごぼう
〇きゅうり
〇キャベツ
〇レンコン
〇ピーマン
〇パプリカ
〇さつまいも
〇じゃがいも
〇ブロッコリー
〇里芋
〇大根
〇栗
このように、果物や野菜は犬でも食べられるものが多くあります。しかし、食べさせ方や与える量を間違えてしまうと、病気になってしまったり最悪の場合は、命に関わる危険性も伴います。与える量やアレルギーがないかをしっかり確認してから、食べさせるようにしましょう。
【注意点】
・トマトのヘタはジャガイモの芽と似た中毒物質が含まれます。
・キュウリはビタミンCを破壊すると言われていますので、与えすぎには注意しましょう。
・キャベツ、ブロッコリーはストルバイト結石の原因になりえます。
・大根の辛みはシュウ酸なので、こちらも部位によっては結石に注意してください。
肉類
犬は豚肉 ・牛肉 ・馬肉・
ラム肉などの肉類は食べても大丈夫です。肉の種類によって含まれている成分は異なりますが、全体的に栄養価が高い食べ物です。
【注意点】
肉類を食べさせる時には、生ではなく加熱してから与えるようにしましょう。
牛肉や馬肉の場合、加熱すると酵素の働きが減少してしまう場合もあります。
しかし、安全面を考えれば加熱をしてから与えるのが好ましいです。どうしても生肉にこだわる場合は、SPF豚を使用してください。
また栄養価が高いため、与える量や主食とのバランスをよく考えて食べさせるようにしてください。
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乳製品
ヨーグルト
犬の腸には、人間と同じように善玉菌や悪玉菌が存在しています。ヨーグルトの中には乳酸菌が豊富に含まれており、犬の腸内にある善玉菌を助け、腸内環境を整える働きをしてくれます。そのため便秘や下痢の改善につながります。
【注意点】
・アレルギーや体質を確認する
ヨーグルトを食べさせる際にはヨーグルトが体に合っているか、アレルギー反応がないかを確認してください。体質によってヨーグルトでも下痢や嘔吐をしてしまう場合があります。
・ヨーグルトの選び方
ヨーグルトにはさまざまな種類がありますが、無糖で更に低脂肪や無脂肪タイプの物を選びましょう。特に体重が気にならない場合は、無糖で普通のものでも良いです。
・ヨーグルトの冷やしすぎはNG
ヨーグルトは一般的に冷蔵庫の中で冷やしておきますが、冷たいまま与えるのはやめましょう。冷たすぎるものは犬のお腹を冷やす原因になります。室温ぐらいまでに戻しておくと良いでしょう。
チーズ
チーズにはたんぱく質・ビタミン・カルシウム・鉄分などの多くの栄養素が含まれており、量にさえ気をつければ、犬に食べさせても良い食品です。
しかし、人間用のチーズの場合は塩分や油分が多く含まれています。食べさせる場合には塩分のあまり含まれていないモッツァレラチーズ・クリームチーズ・カッテージチーズなどのチーズが好ましいようです。
【注意点】
・アレルギーを確認する
乳製品にアレルギー反応を示す子も中にはいます。初めて与える時には、極少量からにしましょう。与えた後にはしっかりと様子を見て、嘔吐や下痢、湿疹などの症状が出ていないか確認してください。
・多量摂取させない
犬が発酵食品であるチーズが好きだからと言って、欲しがる分だけ与えてもいいわけではありません。与えすぎることによって塩分の過剰摂取につながります。塩分を過剰摂取すると高血圧、腎臓障害、心臓にも負担をかけることになります。
また、チーズは脂質が多くカロリーが高いため「脂質異常症」という病気になってしまう可能性があります。 犬にチーズを与える場合は、基本的に「ペット用」とされているものを与え、あくまでチーズはおやつとして与えるようにしましょう。
飲み物
豆乳
豆乳は大豆そのものと比べると、液体である豆乳は消化吸収がしやすいです。栄養素としては、以下のような成分が含まれています。
●たんぱく質
●カリウム
●カルシウム
●マグネシウム
●鉄分
●イソフラボン
豊富に含まれているたんぱく質は、体内で分解されてアミノ酸となり、からだを構成する基本成分となります。鉄分などのミネラルは、全身のバランスを整えると同時に骨や筋肉を強化します。
イソフラボンは活性酸素を除去し、毛細血管の隅々まで血流を促します。
【注意点】
・アレルギーを確認する
大豆アレルギーの子には与えないでください。アレルギーが発症すると、嘔吐や下痢、皮膚の痒みなどの症状が現れます。はじめて豆乳を与えるときは、ティースプーン1杯からスタートしましょう。
・多量摂取させない
豆乳の与えすぎには注意が必要です。消化吸収性が高いたんぱく質であるため、大量に摂りすぎると腎臓に負担をかけてしまったり、下痢を引き起こしたりすることがあります。また食後に激しく動くと、胃捻転の原因になりえます。
・豆乳の選び方
調整豆乳には、糖分・油分・塩分などが添加されています。そのため豆乳を犬に与える場合には、無調整豆乳を選ぶようにしましょう。
麦茶
麦茶には、犬の体にとって有害と言われている「カフェイン」や「タンニン」が含まれていないため、緑茶や紅茶と違い、飲んでも大丈夫です。
麦茶は人間の場合、「体を冷ましてくれる」、「胃粘膜を守る」、「抗酸化作用」、「血行促進」などの効果があり、犬にも同じ効果があります。
しかし、麦茶は人間の飲み物ということを忘れないでください。あくまで水分補給として与える、と考えてください。
【注意点】
・多量摂取させない
麦茶には体を冷やす作用があるので、飲ませすぎることで下痢をする可能性があります。特におなかを壊しやすい子は、注意しましょう。
・麦茶の選び方
麦茶はミネラルが豊富なため、尿結石の子には飲ませない方がよいです。犬に飲ませる場合には、「ミネラル」が添加されていないものを選んであげてください。
スポーツドリンク
スポーツドリンクと言っても、犬用のスポーツドリンクであれば飲ませても問題はありません。
しかし、人用のスポーツドリンクを与える場合は、「糖分」が大量に含まれているため注意しなければいけません。
与える場合は、3〜4倍に薄めてからあげるようにしましょう。
この時、スポーツドリンクを冷やしすぎると犬が下痢をする可能性があるので、常温もしくは少し冷たいくらいの状態で与えるようにしましょう。
その他
豆腐
豆腐は犬にとって一番大切な栄養素であるタンパク質が豊富で、その他にも様々な栄養素が含まれています。
豆腐を使用することで、ヘルシーな低カロリー食にすることができます。肉類の一部を豆腐にすると、ダイエット効果が期待できます。
【注意点】
・アレルギーを確認する
犬の中には大豆アレルギーのある犬もいるので、豆腐をはじめて食べさせる場合は注意しましょう。
・多量摂取させない
豆腐にはリンやマグネシウムが豊富に含まれており、凝固剤に塩化マグネシウム(にがり)を使ったものは「ストルバイト結石」の原因になります。
脂質もたくさん含まれていますので、与えすぎてしまうと太ってしまう可能性があります。
また成分には、水分が多く含まれています。そのため大量に与えるとお腹が緩くなり、下痢をしやすくなります。冷たいまま与えることにより、お腹を壊す子もいますので注意してあげましょう。
納豆
納豆には納豆菌、オリゴ糖、食物繊維が含まれています。これらは、腸の中の善玉菌を増やし、悪玉菌の働きを抑制します。
そのため腸内環境を整え、便秘解消を手助けしてくれます。
※納豆は血が固まりやすくなるので、心臓が悪い犬は控えた方がよいかもしれません。
【注意点】
・アレルギーを確認する
豆腐と同様に大豆アレルギーの犬には食べさせはいけません。アレルギーかどうかわからない場合、最初は数粒だけ与えて様子をみましょう。
・多量摂取させない
体に良いからと、たくさん与えてしまうと過剰摂取による中毒などを起こしてしまう可能性があります。
また、発酵食品である納豆は食べ過ぎると腸にガスがたまることがあります。
・付属品のタレなどは使用しない
人間用に販売されている納豆にはタレやからしが付属としてついている場合が多いですが、これらの調味料は犬にとっては塩分過多の原因になってしまいます。付属品のタレなどは使用しないでください。
栄養バランスや年齢を考えた食事を与えましょう
これまで犬に食べさせてはダメな食べ物・良い食べ物をご紹介してきました。しかし栄養バランスを考え、年齢にも配慮しながら与えるのは大変です。
そこで栄養や年齢に配慮したドックフードをご紹介します。
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まとめ
いかがだったでしょうか?与えてはいけない食べ物はもちろんのこと、与えてよい食べ物でも注意すべきことが多くあります。人間のように、栄養バランスを考えて摂取させるのはとても大変です。
安全性を考え、体質や年齢にあったドックフードが一番栄養バランスが整った食事と言えます。無理に人の食べ物を与えるのではなく、ドッグフードを与えるようにしましょう。
また病気持ちの子は、病院に相談し処方食を食べさせるようにしてください。