原因
赤血球内に寄生するバベシア原虫が病原体です。
世界的には熱帯、亜熱帯地域での発生が多く、国内では関西以西の病気と考えられていますが、感染地域の広がりと、ペットの移動や生活スタイルの変化に伴い、現在では少数ではありますが全国各地で症例が報告されています。
媒介動物であるマダニの成ダニが吸血して産卵する際に、バベシア原虫はダニの卵巣を通過して卵に移行します。そして幼ダニが孵化した際に、その唾液腺に集まったバベシア原虫が犬の体内へ感染するので、ダニから犬へ伝染するまでに36〜48時間程度を要します。
また、母犬から子犬へ胎盤を介しての感染もあります。
赤血球内に寄生した虫体は血球内成分を栄養源として発育し、分裂を繰り返して赤血球を破壊(溶血)します。
症状
赤血球が壊されて溶血性の貧血が起こります。貧血の症状なので運動不耐や歩行時のフラツキ、元気食欲の消失、削痩などが一般的症状です。発熱がある場合も多く、溶血のため尿が赤くなったり黄疸から黄色が濃くなって見えたりもします。放置した場合、重度の貧血から死に至る場合もあります。
治療
抗原虫剤とステロイド剤での治療が一般的です。
重度の貧血がある場合は輸血や造血剤なども使用します。
薬剤ではバベシア原虫を完全には排除できないことや、有効な薬剤の副作用が強いことなどから、この病気の治療は難しいです。
予防
マダニの予防が最大の防御策です。
もしマダニが付いてしまっても、バベシア原虫はどこにでもいる病原体ではありませんし、犬自身の抵抗力に依り必ず発症するわけではないので、慌てずに確実に駆除しましょう。駆除するときはただむしり取るのではなく、必ず駆除薬を使用してください。無理にむしり取って、皮膚深くに食いついているマダニの顎が残ってしまうと、皮膚が腫れる原因となります。
マダニは草木の多い地域に多く生息するため、特に活動期の春〜秋にかけては、外出の際に注意が必要です。家が山野に近い場合や、山野に出かけた時は、マダニの駆除薬や感染予防薬を、定期的に利用しましょう。