1.多頭飼いはするべきなのか?
アイリスペットどっとコム会員さんに向けて行った「犬の国勢調査2016」において、約24%の方が多頭飼いしているという結果でした。
では、多頭飼いの「メリット」「デメリット」はどんなことがあるのでしょうか?
多頭飼いしている人の割合
【犬の国勢調査2016】
回答者数:940名(1,255頭)
調査期間:2016年9月7日〜10月2日
多頭飼いのメリット・デメリット
【メリット】
・自然と群れのルールを憶える
・過保護な状況が改善される
・しつけが厳しくできるようになる
・社会性を身につけられる
【デメリット】
・後住犬が来ることによって先住犬には強力なライバル出現となり、ストレスが加わる
・構ってあげる時間が半分になる
・いろんな面でお金が倍になる
・悪いところも先住犬の真似をして成長してしまう
良い所も悪い所もある多頭飼いですが、実際に多頭飼いしている人にワンちゃんたちの行動や接し方についてアンケートを行いました。みなさんはどんなところに注意して飼育しているのでしょうか?
(多頭飼いについてのアンケート概要・・・回答数433名 調査期間:2017年5月31〜7月2日)
多頭飼いの犬の行動について
【家の中で同居犬にマウンティングする】
【食餌やおやつを見せたり与えたりしたとき、犬同士は友好的である】
犬は優先順位をつけて行動する生き物。家の中でのマウンティングは同居犬にとって優先順位を示す行動かもしれません。調査結果でも約半数の犬が行なっていることが分かりました。
また、食餌やおやつを見せた時にいつも友好的と答えた方が68%と、犬同士の友好関係を築けている人が多いようです。
飼い主さんが行なっていることについて
【複数頭飼っている場合、それぞれの犬に触れ合う時間はほぼ同じくらいの時間である】
【犬を叱るときは、先住犬または年齢の高い犬の方を叱る】
多頭飼いの場合、優先順位をつけるのは飼い主さんがどう接するかで決まることが多いですが、それぞれの犬に触れ合う時間がほぼ同じ方が61%と多く、多頭飼いでも万遍なくかわいがった方が良いと思う飼い主さんが多くいらっしゃいます。でも、犬にとっては本当に良いことなのでしょうか?
では、多頭飼いをしているみなさんはどんなお悩みを抱えているのでしょうか?
今回は、ヤマザキ学園大学講師の茂木千恵先生に獣医行動学に基づいて回答してもらいました。
これから多頭飼いを始めるみなさんもぜひ参考にしてみてください。
お答えいただいた先生
茂木千恵先生
茂木千恵(獣医師・獣医学博士)
東京大学大学院博士課程卒。専門は獣医動物行動学。
ヤマザキ学園大学講師。教育・研究活動の傍ら、動物病院で伴侶動物の問題行動治療や子犬教室開催も行っている。愛犬はプードルのパンチ(13歳オス)。
2.しつけのお悩みについて
Q もともと上の子は穏やかで大人しいのですが、下の子は宅配などが来た時に吠えてしまい、それにつられて上の子も吠えてしまうようになりました。連鎖反応が起こらないようにするにはどうしたら良いですか?
A 犬は吠えている犬がいるとつられて吠えるのが習性です。下の子が吠え始めないように、宅配が来た時にも犬にまず声かけをして、しかけおもちゃやガムなど長持ちするものを与え、そちらに犬が集中している間に応対しましょう。チャイムや宅配が悪いものではないと印象づけるのが大切です。
インターホンのところに「犬のしつけをしているので出るまで少しお待ちください」という張り紙をしておくと待ってもらえますよ。
日ごろのトレーニングとして効果的なものを挙げますので取り組んでみてください。
・チャイムが鳴ったら、吠える犬に「おすわり」や「まて」などの号令をかけ、できたらおやつをあげて褒める。(チャイムはご家族に押してもらいます)
・おやつでハウスまで誘導し、ハウスに入ったらおやつをあげて褒める。
・チャイムが鳴ったら「ハウス」でハウスに入るよう号令をかけ、できたらおやつをあげて褒める。(チャイムはご家族に押してもらいます)
Q 親子犬で母と息子なのですが、息子はとても甘えたがりで何をしても我が物顔です。息子が悪さをしても母犬がすべて許してしまい、私が息子を怒ったら母犬が止めに入ります。これでは躾にならなく困っています。どうしたら良いですか?
A 子犬が1歳未満のときは、母犬には子犬を家族から守ろうとしたり、乱暴な遊びをもちかけても受け流すといった母性行動が見られます。子犬が若いうちに去勢手術をしてしまうと成犬になってもいつまでも子犬のような香りがするため、母犬の母性行動が続く場合もあります。母性行動は本能ですので、家族の都合でやめさせるというわけにもいきません。母犬がいないところで躾をするのが良いでしょう。
例えばいけない行動をやめさせる時、洗面所や廊下など、ふだん犬が立ち入らない場所に連れて行って、「いけない!」と言って、お座りや伏せをさせて従ったら褒めます。叱りっぱなしは良くありませんが、短く強く「いけない!」などの制止の言葉を教えることも大切です。いけないことをしたらすぐにその場所へ連れ出し、それを繰り返すことで、だんだんと「いけない行動をしたら叱られる」と理解できるようになるでしょう。
Q 先住犬13歳、後輩犬6ヶ月です。後輩犬のかまって攻撃に先住犬が困っています。
また、フリーで遊ばせてる時に、先住犬のトイレトレーで後輩犬がおしっこをします。自分のトイレトレーでもするときもありますが、両方でおしっこさせてもいいのでしょうか?そしておもちゃは先住犬用おもちゃ・後輩犬用おもちゃと分けた方がいいのでしょうか?
A 6ヶ月頃の子犬は遊びを通して周りの家族や犬とのコミュニケーション、どこまでやったら叱られるのかを学んでいる最中です。存分にやらせてあげたいところです。老犬にとっては元気な子犬の相手ばかりでは疲れてしまいかねません。先住犬だけが入れるお部屋かハウスを用意しましょう。子犬が入ろうとしたらおもちゃやおやつを使って呼び寄せるなどして先住犬の優先権を守ってあげたいですね。
トイレでちゃんと出来ているのであれば問題ありません。トレーの共用も大丈夫です。シーツが汚れたらすぐに取り替えてきれいにしてあげれば良いでしょう。
おもちゃは分けるのが難しいです。先住犬が気に入っているおもちゃは優先権のあるハウス(または部屋)に入れておくのも良いでしょう。飼い主さんと遊ぶときは、先住犬、後輩犬のそれぞれが飼い主さんと1対1で遊ぶ時間を持ってあげましょう。
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Q 2頭での散歩中に他の家の犬に会うと後輩犬の気が強くなり吠えるか唸るかして、先住犬と喧嘩になります。おやつで釣れば2頭での散歩でも吠えることは少ないですが、吠えて喧嘩になった時の対処法を教えてください。
A 吠えて興奮してしまうと他の犬に対して攻撃的になり、その対象が先住犬に転嫁しているのですね。吠えたときにすぐにやめさせるようにして興奮させないようにしましょう。
対応法は下記のとおりです。
・後輩犬が他の犬を意識したら、吠えだす前におやつを与える。
・後輩犬のリードを短く持ち、足元でお座りさせ落ち着かせる。
・後輩犬に大好きなおもちゃをくわえさせる。
散歩には犬が吠えやむようなアイテムを持っていくと良いでしょう。2頭が喧嘩になる前に対応したいですね。喧嘩をお一人で鎮めるのは難しいでしょうから、上記の対応法に慣れるまでは二人で散歩に出るか、1頭ずつ出るようにしましょう。
3.相性のお悩みについて
Q 個体差が違うため、じゃれ合ったりするのが心配です。多頭飼いする際に犬の大きさの違いはどのくらいまでが良いのでしょうか?
A 基本的にあまり体格差がない方が好ましいですが、グレートデーンとテリアの子犬が仲良く遊んでいる家庭もあります。体格差がある犬を多頭飼育する場合は、先に大型犬を迎え入れて、しっかりとしつけた後に小型犬を迎え入れる方が良いでしょう。
Q 全く性格が違っていて、1頭は犬も人も大好き、もう1頭は怖がりで他の犬と遊べません。私ひとりで2頭を散歩させる場合、出会うワンちゃんと挨拶させたいが、怖がりの子がいるのでさせてあげられません。このような場合はどうしたら良いのでしょうか?
A 2頭の個性を尊重されたとても犬に優しいご意見ですね。すでに成犬で怖がりであれば他の犬と無理に挨拶をさせる必要はありません。ただ、犬たちもお互いのせいで散歩を十分に楽しめていないかもしれません。1頭ずつ散歩に出て、それぞれにしっかり向き合って散歩してあげることで満足度も高くなり、飼い主さんとの絆も強くなるでしょう。
Q 2ヶ月の子犬を飼いました。先住犬との相性と先住犬のストレスが心配です。神経質で人間のような先住犬なので、ストレスも細やかで我慢してしまいます。このような時はどのようにしたら良いのでしょうか?精神的なケアやしつけ方があれば教えてください。
A 慣れるまでは部屋を分けてサークルや柵越しで対面させると良いでしょう。先住犬がある程度子犬に慣れてきたら、子犬をサークルから出し先住犬と触れ合わせます。子犬時期はとても動きが活発なので、先住犬も今までのようにゆっくり過ごせないかもしれません。先住犬だけが入れる部屋かハウスを用意して、先住犬が休みたいときに入れて、子犬は入れないようにして優遇してあげたいですね。子犬もずっと走り回っていたら疲れますし、時間をみて別のハウスに入れて落ち着くことを教えましょう。
ハウスにバスタオルをかけて目線を遮断するのも効果的です。子犬がハウスに入っているときに先住犬と触れ合ったり、散歩に出たりして、1頭きりで向き合う時間を持ってあげたいですね。1歳までは子犬のわがままも先住犬は大目に見てくれますが、成犬になる頃には、先住犬が威厳を持って子犬の行き過ぎた振る舞いを正してくれるようになることもあります。
Q 性格が真逆のため、同時に対処出来ないことがあります。厳しく叱らないと効かない子に叱っていると、叱られるのが苦手な子が委縮してしまいます。音や物に敏感な子が騒ぎ出すと、もう1頭がわけがわからずパニックになるのでどうしたら良いのでしょうか?
A いけない事をした時、繊細な子に遠慮せず、すぐにやめさせることが重要です。すぐにやめさせることが出来ない叱り方は良くありません。ポイントは一瞬でおとなしくなる程度の掛け声や大きな音を使って動きを止めることです。犬の悪い行動が止まったらすぐに褒めます。萎縮した子にも「動きを止めていた」ことを褒めます。叱りっぱなしではなく、ちゃんと褒めることも忘れなければ叱っても大丈夫です。
一方の犬が騒ぐと一緒になって吠えてしまうのは犬の習性です。騒ぎ始める前に対応しましょう。簡単な手順は、下記のとおりです。
1.嫌な音が鳴っているときにおやつを与え、騒ぎ出さないようにする。
2.音や物が嫌なものではない、むしろおやつがもらえる合図だということを分からせる。
3.繰り返すことで音や物に慣れさせる。
4.飼育環境の悩みについて
Q 排泄時に同じ場所でするように教えているので、見ていないときにすると誰がしたものなかが分からなくなることがあります。そのため、それぞれの健康状態が分かりにくいです。トイレは別々に分けた方が良いのでしょうか?分けた方が良い場合はどのようにしつけ直すのが良いですか?
A トイレは2つ以上設置してみて、犬の好みが分かれればそれぞれ使えますが、犬に分けてするようにしつけるのは難しいでしょう。排泄の合図(「ワンツー」、「プープー」など)を使って飼い主が見ているときに排泄させるのもひとつです。排泄しているときに合図となる号令をかけるようにし、できたら褒めます。次第に合図で排泄が起こるようになります。また、犬の排泄する時間帯を観察してみて、それぞれの犬で排泄する時間帯が分かればトイレを分ける必要はないでしょう。
Q 夏の暑さに弱い子と、冬の寒さに弱い子がいます。誰もいない犬だけのお留守番時の室温が心配です。どのように室温を調節していくのが良いのでしょうか?
A 留守番させるときにハウスやサークルに入れている場合は、室温を暑さに弱い子寄りに設定し、寒さに弱い子に服を着せると調節しやすいです。留守番時に、自由に室内を動けるのでしたら窓際やドア付近などは比較的室温が高め、一方家具の下や北側などは室温が低めと、同じ室内でも温度差があります。犬たちは好みの温度の場所で過ごせるでしょう。
Q 先住犬は1人っ子時代があるので、ひとりで留守番することも可能ですが、後輩犬のほうは自分だけが残されることを非常に嫌がります。そのため、ひとりだけでのお留守番が出来ません。いまのところ別行動の必要がない状態ですが、先住犬が病気で入院、なんてことになったとき、後輩犬はひとりで落ち着いて過ごすことが出来るかどうか心配です。
A 将来のことを考えて今からできる予防策を考えておくことは大切です。まず後輩犬がひとりで過ごすことに慣れさせたいですね。 はじめは短い時間(10〜20分くらい)からひとりで過ごさせ、徐々にその時間を長くしていきます。
ひとりで過ごす場所には、ひとりでいることを忘れさせるくらい魅力的なおやつやガム、おもちゃをいろいろ入れておきます。場所は別の部屋に置いたハウスがおすすめです。狭い空間のほうが犬は安心しやすいという習性があります。ひとりで1時間程度過ごせるようになれば、次に後輩犬以外は外出して、留守番させる練習も同様にしてみましょう。出掛けにその時だけもらえるおやつをあげるなどして、退屈にならないように工夫することが成功のポイントです。
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最後に...
まずは犬の習性を理解し、それに合った対応法でしつけをすることが大切です。多頭飼いを始めようと思っている方は今飼っているわんちゃんのしつけから見直し、多頭飼いで失敗しないようにしましょう。