フィラリア症に注意!

犬フィラリア症(犬糸状虫症)は犬と切っても切れない厄介な病気です。
1986年、月に1回投与するタイプの薬が承認される以前はフィラリア症が不治の病として犬の平均寿命を8歳程度に抑えていました。
しかし、薬が使用されるようになってからは年を追うごとに平均寿命が延びて、現在は10歳を余裕で超えられるようになりました。
犬フィラリア症は蚊がいないと感染しない病気で、寄生される蚊にとっても生命を脅かす危険なものです。

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目次

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媒介する蚊

人や動物を吸血するメスの蚊がフィラリアを媒介します。 蚊のライフサイクルは卵→幼虫(ボウフラ)→さなぎ→成虫→卵で、蚊成虫の寿命は1ヶ月程度です。 気温15℃くらいから吸血をし、活発に活動する気温帯は26〜31℃の間(22℃くらいからという意見もあり)です。

代表的なヒトスジシマカ(ヤブ蚊)は卵の状態で越冬して春に成虫が羽化し、11月頃には卵を残して死滅します。
アカイエカ、チカイエカはメスが成虫のまま越冬し、チカイエカは暖かい室内で刺すことがあります。
蚊は僅かな水たまりがあれば産卵します。家の回りをチェックしてみてください。
植木鉢やプランターの受け皿、空き缶や空き瓶、ペットボトル、古タイヤや、その他雑多な物に水が溜っていたらすぐに捨てます。側溝などの淀みも水を流して清掃します。

フィラリア虫はウイルスや細菌ではなく、回虫などと同じ体内に寄生する線虫の仲間です。蚊を媒介とするので、吸血する蚊が棲息できるエリアに住む犬、オオカミ、コヨーテ、キツネ、タヌキ、クマ、イタチ、フェレット、アライグマ、ネコ、温暖地域に棲息するアシカなど食肉目の動物、まれに人間にも感染します。
夏場、高温多湿となる日本では蚊の繁殖が容易で、すべての蚊を排除することは不可能です。
フィラリア虫は体内で異物と判断されますが、免疫力で排除できないので、投薬による駆虫で対処します。
薬の開発も進んで、罹患していても治療ができるようになりましたが、後遺症は残ります。

動物病院の診察室などで標本を見たことのある人も多いと思いますが、 フィラリアの成虫は、細長い素麺のような姿をしています。
オスが体長約10〜20cm、メスは約25〜30cmにもなります。
投薬駆虫されない場合の成虫は5〜6年の寿命があり、 成虫のみが犬の健康に深刻な被害を与えます。

フィラリア虫のライフサイクル

フィラリア虫は卵を産まない卵胎生です。成虫となって交尾を終えたメスは1日に2,000〜3,000匹もの幼虫を生み続けます。
生まれたばかりの幼虫をミクロフィラリアと呼び、幼虫は5つのステージで成長します。
成長段階はミクロフィラリアをL1とし、脱皮ごとにL2、L3、L4、L5と表記されます。
Lは「Larva・幼虫」の意味です。L1〜L5を経て成虫になります。

上の表をご覧ください。

L1のミクロフィラリアは血液中を漂いながら蚊に吸血されるのを待ちます。吸血されなかったミクロフィラリアは成長せずに2年程度で死滅します。

蚊の体内に入ったミクロフィラリアは蚊の免疫抵抗や、蚊自体の衰弱により死ぬものもいますが、生き残ったミクロフィラリアは2〜3週間程で2回の脱皮を経て感染可能なL3に成長し、蚊の口吻に移動します。
段階の幼虫はL1よりも大きくなっているので犬の体に注入されるのではなく、吸血時に出される唾液とともに犬の皮膚に落ち、吸血で傷つけられた穴を目指して侵入を果たします。

犬の体内に入ったL3は2回脱皮してL5に成長し、血管に入って成長しながら肺動脈を目指します。
肺動脈に辿り着き成虫となったフィラリア虫はL3で侵入してから6〜7ヶ月後に交尾、産卵します。


フィラリア虫のライフサイクルを図説するとこのようになります。

薬による駆虫がされなければ、さらなる感染により成虫はどんどん増えます。
増え過ぎた成虫は肺動脈に収まりきれなくなり、心臓の右心室にたまって、よく見られる標本のような心臓にびっしり集った状態となります。大量の成虫を抱えた犬は心肺の働きを阻害され、さまざまな合併症を起こして死に至ります。
この死に至るまでの期間が、かつての平均寿命、8年未満と合致するわけです。

フィラリアの症状

フィラリアの慢性症状として以下のようなものがあります。

咳をする

食欲がない、痩せてくる

疲れやすい、遊びたがらない

歩いている最中に失神する

貧血や呼吸困難をおこす、腹水がたまっている

フィラリアの予防

夏場、蚊の活動温度帯で生活している犬が、蚊に刺されずに過ごすことは非常に困難です。生まれてから何も予防をしなかった犬は、3年目で9割以上が感染してしまいます。
フィラリアは投薬という簡単な方法で防ぐことが出来るので、大切な愛犬を守るためにも必ず予防しましょう。

薬には錠剤、顆粒、チュアブル(おやつタイプ)、滴下式があります。獣医さんと相談して愛犬に合う薬を選んでください。投薬は蚊の姿を見てから1ヶ月後くらいからスタートします。
予防薬はL1にも効く種類がありますが、基本的にL3、L4を対象としています。

幼虫がL5に成長するまで50〜60日かかるので、 刺されてすぐに飲ませなくとも充分な猶予があります。
薬の効力は1日程度で、1ヶ月間効き続けているのではありません。
幼虫は犬の健康になんら害を与えないので、幼虫のライフステージを 利用して月に1回、まとめて駆除という方法をとっているのです。

◆診断◆
血液検査で調べます。昔は血液を顕微鏡で見てミクロフィラリアの有無から診断していましたが、今は抗原検査によって診断します。
採血後5分ほどですぐに診断できますが、感染6ヶ月以内の未成熟成虫や、オス成虫に反応しないので確率は100%になりません。 体内にいた成虫が自然死したあとでも抗体が約16週間残っていることがあり、本来陰性なのに陽性と判定されるケースもあります。
この検査は成虫の存在を判定する方法なので、成虫がいると判定されても数がどれくらいいるのかが分かりません。
その犬の症状、病歴、飼育状況などから総合的に判断が下されます。

薬を飲ませていたのになぜ?

フィラリアは定期的に薬を投与していれば充分防げるものですが、まれに検査で陽性と診断される犬が出て来ます。

予防薬の最終投与が早かったり、投薬を忘れていた。

近年、暖房や温暖な気候が続いたりで、蚊の活動期間が伸びています。蚊の姿を見なくなったらそれで投与をやめるのではなく、そこから1ヶ月プラスで計算してください。11月になって蚊がいなくなったのであれば、11月末か12月始めに必ず飲ませます。投薬を忘れないよう、カレンダーなどにチェックを入れて必ず飲ませるようにしてください。

下痢や軟便、嘔吐で充分腸内にとどまっていなかったために、薬効成分が吸収されなかった

投薬は1ヶ月に1回と言われていますが、幼虫のライフサイクル的にも 充分な余裕があるので焦らなくても大丈夫です。
お腹の調子を整えてから投与しましょう。

薬を飲んだふりをして、あとで吐き出している

錠剤のまま投与すると、器用に口の端から出してしまう犬や、吐き出してしまう犬がいます。
おやつのようなチュアブルタイプのものを与えたり、食事の直前におやつに混ぜて飲ませ、そのあと食餌を与えて吐き出すチャンスを与えないようにします。食後もしばらく様子を見ておいてください。

フィラリアはきちんと予防すれば100%防げる病気です。
大切な愛犬が長生きできるよう、投薬はもちろんのこと、居住環境にも配慮してあげてくださいね。



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