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445DOG&CAT 〜預かった445頭の命〜
避難所の寒い倉庫の片隅でお父さんに抱え温められている愛犬。雪が降る中、避難所の外にひもで繋がれたままのトイプードル。泥まみれで大好きなお父さんを探し彷徨うミニチュアシュナウザー。
みんなあの日が来るまでは普通の…当たり前の幸せな毎日でした。膝の上やお気に入りの場所があって、大好きなご家族がいつも傍にいました。
1.東日本大震災
信じられない光景は多くを奪っていました。
安らぐ家も。そして培ってきた財産も。それぞれの思い出に大切な歴史。そしてかけがえのない大切な人も。
宮城県仙台市はペット同行避難の講習会も開催されていた行政の1つでしたが、実際機能はしませんでした。それは予想をはるかに超え過ぎた被害状況だったのは誰もが知っている事実です。何よりも人命救助が1番となりました。
幸いにしてdogwoodはライフラインが途絶えたもののスタッフ全員、犬舎も無事でした。出来ることと言えばこの状況下、不安はありましたが不思議と迷いはありませんでした。
ここには広いフィールドがあり、ブリーダーとして13年、多頭飼育の経験があり、敷地内に動物病院を併設していました。
避難所にフードや毛布ケージを届けながらポスターを張り、地元新聞やラジオで呼びかけました。
「被災し当面飼えなくなった犬猫を無償で預かる。出向くことも可能。フードや消臭剤などもある。」
鳴りやまない電話は昼夜を問わず鳴り続け状況を確認することだけでも、心が折れそうになりました。電気の復旧が進まない地域では愛犬の不調を新聞で呼びかける飼い主さんもいました。すぐにお迎えに向かいお預かりさせて頂くことができましたが、どんな状況下にあってもペットを心配し、身動きがとれないご家族は多かったように感じています。
4月を迎える前に100頭を越えていました。
犬猫たちの休める環境と十分な食事、怪我や病気の治療、そして予想を超える頭数が集まる以上は予防を。
飼い主さんたちの心労と負担を少しでも軽減できればとそれまで断っていた支援金を募ることにしました。
出来る限りの現状をブログで発信し続けるうちに全国から励ましのメッセージや支援物資、支援金としてご協力を頂くことができ、これは有難いことに現在も続いています。お顔もお名前も知らない方々からお寄せ頂く支援物資はブルーシートから犬猫の用品…ボランティアの皆さんにとお菓子から、すっぴんスタッフへと化粧品に至るまで(仮設住宅への支援物資にしました)…本当有難く、助けられています。
2.あれから1年
現在131頭。まだご家族と共に暮らすことができず、ここdogwoodでお預かりさせて頂いている犬猫の現在の頭数です。
震災から445頭お預かりさせていただき、ご家族の元へ帰ることができたのが約4割。預かりボランティアとして現在もご家庭でお世話頂いているのが37頭。
里親として繋ぐことができた子もいますが、残念ながら亡くなってしまった子もいます。
もうすぐ一年を前に、先が見えない生活がゆえに家族の一員だった愛犬の今後に想いを馳せ「里親を」と希望される飼い主さんも増えて来ている現状です。
あっという間の1年でした。震災から時が経つにつれ保護施設の閉鎖や預かりの有料化もある中で、そこから来る犬猫もお預かりさせて頂くことができるのも、12戸のプレハブを準備し環境を整えることができたのも、ご自身の身に起きたことのように、ご協力と応援を続けて下さった全国の皆さんのお陰です
3.できること
ここだけではなく、日常を取り戻すことができない犬猫たちは他にもたくさんいます。
復旧工事の遅れや大工不足。そして仮設住宅へ入居できたもののペット不可といった状況の場合、お迎えの目途はありません。まだまだ先は長くなりそうです。
もしお時間が許すなら、ぜひ近くの保護施設まで足を運び、人と共に暮らしていた犬猫たちに寄り添い、少しでも声をかけてあげて下さい。時間の経過と共にボランティア不足という問題はどこも付きまとっています。
保護されながらもハウスにほとんど入ったままの愛犬を思い浮かべてみて下さい。
もしお時間がないのなら、情報の拡散、物資支援や支援金といった形でご協力をお願いしたいと思います。遠く離れていても、時間がなくても、ご家族のお迎えがあった時、新しい生活への一歩を踏み出す時、動物を家族の一員とし暮らす飼い主の1人として、一緒に喜びを共有して頂けたら嬉しいです。
4.感じた問題点
ご家族しか備えることも守ることできない愛犬のために、鑑札やマイクロチップをつけてあげて下さい。装着していた犬は行政が動き始めて早々ご家族と再会することができています。
狂犬病や混合ワクチン、フィラリアなどの予防はしっかり済ませて下さい。予防を知らなかった、忘れていたなどが原因で、フィラリア症で搬送途中、そしてここでも亡くなってしまった子がいます。
保護活動をはじめしばらくした頃、お預かりしていた子たちのベビーラッシュを迎えました。ここで生まれた子犬子猫だけで50頭以上。みんな里親さまに繋ぐことはできましたが、全国各地里親募集の声が経つことはありません。生まれてくる小さな命一つ一つに最後まで責任を果たすことができないのなら、不妊管理の徹底も飼い主として重要な選択ではないでしょうか。
そして人と共存する家庭犬として最低限のしつけは不可欠。人に対して牙をむき、吠え続けることはやはり許されないのです。愛犬にとって何が本当に可哀想なのか見極めて欲しいと願います。
5.そして最後に願い
不安定な生活を続けざるを得ない被災された皆さんはもちろん、ここで過ごすみんな、そして同じ状況におかれたたくさんの動物たちが「大切な普通だったあたり前の毎日」を1日でも早く取り戻すことができますように。
今後長期化する体制を整えると共に皆さまには継続的なご支援のお願いも続けていかなくてはなりません。どうかその日まで温かく見守って頂けたらと願っています。
2012年3月6日
dogwood
ドックウッドわんにゃん災害支援
代表 我妻真紀
冒頭のお父さんの抱きしめられていた愛犬は病気の治療中でした。お預かりさせて頂いている間の治療で完治。4ヶ月後嬉しい帰宅記念日を迎えました。
避難所の外で繋がれていたトイプードルはその後会えることはありませんでした。
大好きなお父さんと離れてしまったミニチュアシュナウザーは保護され2ヶ月が過ぎた頃、TV取材時の映像がきっかけで飼い主さんが判明。大好きなお父さんは津波で亡くなってしまいましたが、ご家族の元へ帰ることができました。
dog wood ドックウッドわんにゃん災害支援
代表 我妻真紀さん
仙台市のドッグブリーダー兼被災犬・猫保護施設dogwood(ドッグウッド)を運営。
※当サイトはdogwood様の活動には直接関与しておりません。当記事・被災ペットに関するお問い合わせは直接dogwood様へお願いいたします。