「全身麻酔は危険!」と思い込んでいる飼い主さんも多いのではないでしょうか?
しかし、犬の手術に麻酔は欠かせません。
あなたの愛犬も、いつ麻酔が必要になるかわかりません。麻酔のメリット・デメリットを見ていきましょう。
1.麻酔の種類
犬の麻酔には、全身に麻酔をかける「全身麻酔」と、体の一部に麻酔をかける「局所麻酔」があります。
通常、麻酔といえば、動物病院では全身麻酔を指します。
<全身麻酔>
全身麻酔の方法は、吸入麻酔と注射麻酔の2種類があります。
(1)吸入麻酔
肺胞から麻酔性ガスを吸わせて全身麻酔をかける方法です。人と違って動物はマスクを我慢してつけてくれませんので、吸入麻酔の直前に超短時間型の注射麻酔が使用されます。吸入麻酔は麻酔の濃度を気化器の目盛りで随時調節可能です。効果が足りなければダイヤルの目盛りを上げ、効きすぎていたら下げる事でタイムリーに麻酔の濃度をコントロールできるので安全性が高いです。
【吸入麻酔のメリット・デメリット】
■メリット
・麻酔の深度と時間調節が自在。
・覚醒が早い。
■デメリット
・高価な専用の麻酔装置が必要。
・麻酔薬の価格も高価。
・排気管理が必要。
安全性でいうと吸入麻酔が明らかに有利であるため、現在では短時間の手術でも吸入麻酔を使用する病院がほとんどです。
(2)注射麻酔
注射だけによって麻酔を行うのが注射麻酔です。ある一定の量を注射すると一定時間麻酔がかかります。麻酔が浅くなったらその都度追加の注射をします。麻酔の量の基準はあるのですが、麻酔の効き具合は個体によって様々なので、基準の量で効きすぎて呼吸が止まってしまう犬もいれば、まったく効かずに処置できない犬もいます。
ドミトールという注射麻酔薬は、拮抗薬を注射するとすみやかに麻酔から覚醒できるのですが、残念ながらこの薬は(不整脈が発生するために)犬では使用できません。
【注射麻酔のメリット・デメリット】
■メリット
・大がかりな麻酔装置を必要としない。どこでも可能。
・安価。
■デメリット
・必要以上に麻酔時間を長くとってしまったり、逆に処置途中で覚めたりする。
・一度入れてしまった注射は多すぎたと思っても後からどうしようもない。覚めたと思って追加の注射をすると効きすぎる場合も多く、しかしなんの手も打てない。
・覚醒に時間を要する。
<局所麻酔>
局所麻酔は、麻酔をかけたい部分を囲うように注射していきます。局所麻酔は全身麻酔に比べると、よほど大人しい犬で無い限り、局所麻酔だけで処置をさせてくれることは少ないです。
人ではよく硬膜外麻酔(脊椎を覆っている硬膜に注射する麻酔)が行われますが、これは犬では行われません。
【局所麻酔メリット・デメリット】
■メリット
・全身麻酔に比較すれば危険性が少ない。
・絶食などの前処置がいらない。
・術後に自力で歩行可能。
・安価。
■デメリット
・注射がものすごく痛い。2針くらい縫うのだったら、無麻酔で縫って針の痛みを我慢する方がまし。
・暴れるのを制止することはできないので、たとえ痛みがなくても多くの犬が暴れて結局処置できない。
2.麻酔の対処
<一般的な麻酔の処置>
通常麻酔では少量の鎮静剤、麻酔剤を注射し、大人しくなったところで吸入麻酔で導入、維持を行います。避妊手術や、それ以上の麻酔時間を要するものには点滴を行います(去勢手術は短時間で終わるため点滴は行いません)。麻酔中のモニターには呼吸モニタ、心電図モニタ、SPO2モニタ、炭酸ガスモニタ、カプノグラム、血圧、麻酔濃度モニタを使用します。(すべての病院がこれら全部のモニターを使用しているわけではありません)
<麻酔中、麻酔後に起きる体の変化>
麻酔中や麻酔後にはどのような体の変化や危険・リスクがあるのか、また危険への対処法についてみていきましょう。
(1)
【体の変化】…全身麻酔中は体の反射が消失。
【危険性】…吐いても外に出したり飲み込んだりできないので、吐いたものが気管につまる危険性がある。
【対処法】…絶食で危険が回避できる。
(2)
【体の変化】…心拍出量の減少、心拍数の低下、血圧の低下。
【危険性】…諸臓器へ行く血流も減少。
【対処法】…健康な犬猫であれば、自分の調節機構で血圧を維持できるが、状態により交感神経を刺激する薬で対処する。
(3)
【体の変化】…交感神経の鎮静。
【危険性】…迷走神経が優位になり不整脈が出現。
【対処法】…健康な犬であれば、自分の調節機構で血圧を維持できるが、状態により交感神経を刺激する薬で対処する。ただし、急激な不整脈による心停止には対処不可能。
(4)
【体の変化】…呼吸数の減少、停止。
【危険性】…低換気になる。
【対処法】…人工呼吸器で調整できる。
(5)
【体の変化】…肝臓、腎臓への影響。
【危険性】…麻酔の代謝は肝臓、腎臓等で行われるのでこれらの臓器が悪い場合麻酔から覚めなかったり、肝障害が悪化したりする危険がある。腎不全をおこす場合がある。
【対処法】…事前に血液検査で発見できる。
(6)
【体の変化】…てんかんが発生。
【危険性】…もともと、てんかんの症状がある犬の場合、発作が激しくなる場合がある。また、てんかんの症状がない犬にも発生する可能性がある。
【対処法】…予測不可能。もともと、てんかんの症状がある犬には、麻酔の導入に抗てんかん作用のある超短時間型の薬を使用する。
3.麻酔の影響を受けやすい非常に危険な病気、危険な犬種
<麻酔が影響を与える非常に危険な病気>
副腎皮質機能亢進症(通常検査で見つからない事が多い)
→副腎皮質機能亢進症(クッシングシンドローム)
<麻酔の影響を受けやすい危険な犬種>
ブルドック、ペキニーズ、狆、チャウチャウ、パグ、グレーハウンド
4.麻酔から目覚めたら・・・
手術の前に鎮痛剤を使用する動物病院も増えてきました。しかし、鎮痛剤の使用により、血圧がより低下したり、出血が増加したりするといったリスクもあります。
そして、麻酔から覚めた時「犬は痛がっている」という意見もあります。
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最後に…
麻酔についてメリット・デメリットを見てきましたが、いかがでしたか?犬の手術に麻酔は欠かせません。健康な犬の場合でも避妊手術や去勢手術では、麻酔が必要になります。普段から飼い主さんが愛犬の様子や体調をよく観察し、麻酔について不安があれば、動物病院で獣医師や専門家によく相談しましょう。