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1.セカンドオピニオンが必要な時ってどんな時?
軽い病気には必要はないでしょう。
命に関わるような病気や大がかりな手術が必要な場合など、ここイチバンのときにセカンドオピニオンを求めればよいです。病気がなかなか治癒しない場合や治療費が高額で他に選択肢がないか知りたいなどの場合にもお勧めします。
<セカンドオピニオンのメリットとデメリット>
■メリット
・ 説明が二人の獣医師になるので、よりよく病気に対しての理解が深まる。
・ 場合によっては見立てがまるきり異なる場合があるので誤診を防げる。
・ 手術の方法、技術や外科器具装置の差なども病院間で異なるのでよりよい選択肢が選べる場合もある。
・ セカンドオピニオンと主治医の意見が一致した場合は自信をもって治療にあたれる。
■デメリット
・ 稀に主治医と全く別意見が出ることもある。
この場合は飼い主としてどちらを信用してよいのか非常に迷いますので、セカンド・サード
・フォースと病院を廻る事になるでしょう。
・ 診療機関が違えば診察、検査の費用などがそれだけかさむ。
・ セカンドオピニオンを受けたいと相談したときに怒り出す獣医さんが主治医だったりすると、悪いことではないのに、飼い主さんの気分が落ち込む。
2.実際にセカンドオピニオンを求めた飼い主さんの例
(1)セカンドオピニオンの結果、見解が一致した例
事例)乳がんの術後の再発で来院した猫のリンカちゃん。主治医の判断では再手術しても持病の腎不全があるので延命は望めないだろうとの見解でセカンドオピニオンを求めに来院しました。血液検査では慢性腎不全で軽度の非再生性腎性貧血(腎臓から造血ホルモンであるエリスロポエチンが分泌され骨髄で赤血球が生産されるが、腎不全の猫はこのホルモンが不足する為に新しい赤血球が作られなくなり起こる貧血。)も始まっており、余命を考えると6ヶ月ほど。腫瘍が現在悪影響をおこしている様子はありませんでした。
「手術をしても腎不全があるのであまり延命は望めない。麻酔の影響で腎不全が悪化する恐れも充分あり、その場合は寿命を縮める事になる。」との見解から主治医の手術をしないという意見に賛成しました。だからといって腫瘍を放っておくことはできませんのでキノコ系の免疫の薬とサメの軟骨の内服をお奨めしました。
(2)セカンドオピニオンの結果、転院して手術した例
事例)皮膚の悪性組織球腫という腫瘍で来院したシロちゃん6歳。3ヶ月前に主治医の元で腫瘍の摘出をうけ、病理検査で悪性と判明。抜糸のころには再発し10cm近い腫瘍をつけて来院しました。主治医からは『ひたすら切り取り続ける』か『安楽死』の提案をされたそうです。
「切り取ってもまた再発するのでは」と飼い主さんはとても不安そうでしたが拡大切除と免疫療法(生体を防御する免疫のうちで細胞性免疫系を活性化させて腫瘍を治療する方法)の併用を提案し、納得してもらいました。免疫療法はまだ新しい治療分野で取り組む病院が少ない治療法です。転院を強く望まれたので手術も行い、現在数ヶ月たちますが患部に5mmほどのしこりが観察されるのみで順調です。
3.主治医にセカンドオピニオンすることを告げるべき?
セカンドオピニオンを受けるのを告げるかどうかはその獣医師の自信のほどにもよります。診断と技術に自信のある獣医師は快諾します。逆にヘソを曲げるような場合は他の病院で診断を受けると何かマズイ理由があることもあるんですね。
主治医に「セカンドオピニオンを受けたい」と告げた場合、検査データを貸し出せる範囲で提出してくれるはずですから検査がダブらずに済み費用が安くなります。「セカンドオピニオンを受けたい」と告げるのが気まずい場合は費用はかさみますが、数日考えさせてくださいと告げて他の病院で診察を受ければよいだけの話です。
4.飼い主に必要な心構えとタブー
命に関わるような重大な疾患が多いですから病気に対してきちんと理解すること。病気と治療方針に対して充分な理解と同意ができるようにするためのセカンドオピニオンです。しかし、サード・フォースと病院をグルグルと廻っても多くはあまり良い結果は産みません。あちこちの病院をさまようような飼い主は定着してくれないし、診察結果や指導に対してあまり言うことを聞いてくれないので病院からも敬遠されます。
セカンドオピニオンでやらない方がいい事は他の病院の悪口を言うことです。これをやると敬遠されます。ほとんどないですが値踏みもやめましょう。「あそこでは8万だったけどお宅ではいくら?」みたいなセカンドオピニオンを求める飼い主さん、これは答える方として非常に困ります。価格で選んでもらっても全然うれしくないですからね。
最後に…
セカンドオピニオンは決して失礼にあたることではありません。まずは勇気をもって行動し、適切な方法や自分の考えにあった治療方法を見つけることが大切です。