原因
子犬の場合と成犬の場合で原因は違ってきます。
1.子犬の低血糖症
生後3ヶ月までに多く見られます。消化管内寄生虫症、過敏性(ストレス性)腸症候群、パルボウィルス感染症など、何らかの疾患がある犬が、長時間食事がとれないことがきっかけとなって低血糖症を発症します。成犬では数日間食事を摂らなくても肝臓内に貯蔵したグリコーゲンを分解して血糖値を維持できますが、子犬ではその余裕がありません。
特に小型犬で下痢や嘔吐を繰り返している場合には、低血糖症に注意が必要となります。
また、気温の低下も低血糖症を誘発する原因のひとつとなります(寒いとエネルギーを消耗するため)。
2.成犬の低血糖症
5歳以上の犬に多く、副腎皮質機能低下症(ホルモンバランスの異常)、膵臓の腫瘍(インスリンの過剰分泌)、敗血症(重度の感染症)などの疾患が原因で低血糖症を発症します。
また糖尿病にかかっている犬で、治療において血糖値のコントロールが困難な場合には、治療薬として投与されるインスリンの過剰によって低血糖に陥る可能性があります。
症状
主な症状は、ぐったりする、運動失調になる、元気がなくなる、体の後半身(下半身)の麻痺、痙攣発作を起こす、などです。 血液中の糖分の下がり方や低血糖症が続いた時間、血液中の糖分の濃度によって症状は多少異なります。てんかんのような痙攣とは違い、持続性ではあるが、あまり激しくない筋収縮です。例えば、前肢だけを突っ張ったり、意識は無いが歯を食いしばって口が開けづらい、などです。
診断
症状や血液検査で明らかになります。血糖値70mg/dl以下が低血糖症の目安とされています。血糖値が50mg/dlくらいに低下すると筋肉の硬直が見られるようになり、40mg/dl以下では生命に危険が生じます。
治療
ブドウ糖の投与(口からの投与または注射による静脈投与)を行います。
対策
<子犬の場合>
空腹時間を減らすために、1回あたりのドッグフードの量を減らして食事回数を増やすなどの工夫が必要になります。
緊急時に家庭で対応するために、砂糖水や蜂蜜をすぐに飲ませられるように用意しておくと安心です。食欲・元気の減退時に予防的に使用してもいいでしょう(ただし甘いものの常食は逆効果なので、与え過ぎには注意が必要です)。
痙攣発作が起きている場合には無理に飲ませるのは危険を伴うため、歯茎にすりこむようにして与え、すぐに病院へ行きましょう。
<成犬の場合>
原因疾患の特定と治療が必要になります。
成犬の場合でも、痙攣が起きた時に砂糖水や蜂蜜を飲ませても効果があります。ただし、効果があるのは痙攣の原因が低血糖の場合のみで、てんかん発作などの痙攣には無効です。