日本人と犬の関係
麻布大学で行なった調査では、実に79.6%の飼い主さんが犬の行動に何らかの問題を感じていることがわかりました。皆さんはどうですか?『問題には感じているけど、我慢していることや仕方なく受け入れている』そんなことはありませんか?
日本人と犬の歴史は、西洋と異なります。西洋では、仕事の目的に応じて様々な犬種を作り出しました。例えば、牧羊犬としてボーダー・コリーやジャーマン・シェパードなど。そして、仕事に応じたトレーニングを行い、犬との関係を築いてきました。
む〜さんちのきなこちゃん 一方、日本は対照的で、大正時代まで犬は、野犬とも区別がつけがたい“地域犬”として放し飼いにされていました。つまり、彼らに仕事を与えるどころか、トレーニングをする発想はほとんどなく、“あるがままの犬を受け入れる”、そんな関係だったようです。
このことから、現代の日本人は、“犬の困った行動を受け入れようとする。しかし、そこに違和感を抱いている。”といった状況なのかもしれません。ですが、きちんとトレーニングをしていけば、愛犬との関係は良いものとなり、問題も改善していきます。もう我慢はせずに、一緒に楽しみながらトレーニングしていきましょう。
トレーニング前の心がけ
平成22年に内閣府は、『動物愛護に関する世論調査』を行いました。この中で、ペット飼育の好き嫌いをたずねたところ、「好き」と答えたのは全体の72.5%で、「嫌い」と答えたのは25.1%でした。ペットブームと言われる昨今、少数であってもペットが嫌いな人やペットにアレルギーを持つ人たちがいることを忘れてはいけません。また、ペット飼育の迷惑では、“散歩している犬のふんの放置など飼い主のマナーが悪い”、“犬の放し飼い”といった問題が浮き彫りとなっています。これは、犬の問題ではなく、飼い主さんがどう対処するかの問題です。トレーニングをして、愛犬が色々なことを覚え、さらに問題が改善したとしても、日頃からの心がけが悪ければ、日本社会におけるペット飼育の問題は改善しません。
さらに、地震が多い日本では、いつ災害に遭遇するか分かりません。愛犬と一緒に避難所に入るためには、日頃からの心がけや愛犬が社会の一員として認められようにトレーニングをすることが必要です。
トレーニングは楽しい♪
愛犬が楽しそうに言うことをきいてくれる。トレーニングは愛犬とのコミュニケーションです。上手に行っていけば、皆さんの生活はもっと豊かなものになります。そしてなにより、周りの人からも“可愛い” “すごいね”って思ってもらえる。これは、とても大切なことです。
犬のトレーニングは、下の3ポイントさえおさえてしまえば簡単です。決して忘れないでください。
1.愛犬が好きなモノを知る。
2.褒め言葉を統一し、褒め言葉の意味を教える。
3.タイミング良く褒め言葉をかける。
1.愛犬が好きなモノを知る
トレーニングは、愛犬が好きなモノを与えながら行います。そうすることで、人からの指示を嬉しく感じるようになり、色々なことを学習してくれます。
では皆さんの愛犬が、好きなモノは何ですか? “食べ物を食べる” “ボールをおいかける” “撫でてもらう”など、探してみてください。一度、与えてみて、また直ぐに欲しがるものでなければ、本当に好きだとはいえませんよ。
愛犬が好きなモノを、全て書き出してみましょう。
好きなモノの中で、繰り返し与え易いものは全て、愛犬にとってのご褒美になります。食べ物が好きであれば、“小さくちぎった食べ物”が、理想的です。何故なら直ぐに飲み込め、次を欲しがるからです。
ご褒美の数が多いほど、トレーニングは効率的に行えます。沢山のご褒美を用意するようにしましょう。
2.褒め言葉を統一し、褒め言葉の意味を教える。
3.タイミング良く褒め言葉をかける。
この2つの内容は次回から、動画を使ってご紹介していきます!!
参考資料
・イヌの問題行動をもたらす要因に関する研究 -入手ルートによる行動特性の違いとHPA軸活性-, 中村広基, 平成21年度 麻布大学大学院獣医学研究科動物応用科学専攻 博士論文
・「ヒトと動物」 林良博・近藤誠司・高槻成紀共著
・「犬を飼う知恵」 平岩米吉著 築地書館
・「犬の日本史」 谷口研語著 PHP研究所
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長谷川 成志(Dr. Masashi Hasegawa Ph.D.)
博士(学術:動物人間関係学分野)
麻布大学獣医学研究科共同研究員
(株)Animal Life Solutions 取締役 -
アシスタントドッグ育成普及委員会(H13〜17年度 住友生命支援事業)の奨学生としてアメリカの介助犬団体Summit Assistance Dogsに留学し、Certificate of Achievementを取得。2009年10月には世界的なドッグトレーナーの資格CPDT-KAを取得。「人が犬を学び・犬が人社会のルールを学ぶ」をコンセプトに掲げた犬のしつけ方教室「スタディ・ドッグ・スクール?」を麻布大学と共同で企画、運営し、講師として活動。さらに麻布大学動物応用科学科の動物トレーニング実習にて、東日本大震災で被災犬となった犬達などの健康管理とトレーニングのサポートを行っている。
スタディ・ドッグ・スクール?