原因
次の二つに分けられます。
1.特発性(原発性)てんかん
「特発性」というのは、この場合は「原因がわからない」という意味です。検査によって他の原因が否定された場合に診断されます。遺伝的な要素が関連していると考えられています。犬のてんかんのほとんどはこの特発性てんかんです。特にダックス、ビーグル、プードル、シェルティー、シェパード、ハスキー、テリア系、レトリバー系は特発性てんかんの遺伝的な要素を持っていることが知られています。その中でも、ここ数年でダックスのてんかんが増加しています。
2.二次性(症候性)てんかん
交通事故など外傷による後遺症や脳腫瘍や脳炎、水頭症などの障害により引き起こされるてんかんのことをいいます。
症状
1.全般発作
脳全体が一斉に興奮する状態となり、全身性の発作がみられます。
不安、落ち着きがない、流涎、嘔吐などの前兆があり、突然前足と後ろ足がピーンと伸びて、横転したり後ろへのけぞったりして、足や口を細かくガタガタと震わせる、手足の屈伸運動や犬かきをして泳ぐような運動が続きます。この時、動物には意識が無く、眼の瞳孔は開き、失禁したり脱糞したり口から泡を吹いたりします。通常、数十秒から2〜3分間で終わって、ケロッと普段の状態に戻ったり、しばらくもうろうとした後にだんだん普通の状態に戻ったりします。重度の場合は短い間隔で何度も繰り返す場合もあります。
2.部分発作
脳の一部分だけが興奮した状態です。興奮した部分の脳と関係する体の一部だけが変化し、発作となります。例えば前足を動かすことを命令している脳の部分だけが興奮すると、前足だけが痙攣します。
意識に関連する場所の脳が興奮した場合では、呼びかけても反応しなかったり、咀嚼(そしゃく)運動(歯を噛む動作)や顔面痙攣、大量のよだれ、散瞳(瞳孔が開く)などが起こります。
診断
「数年に一度」「月に数回」「日に何度も」「一回だけ発作を起こして、その後死ぬまで発作を起こさなかった」など発作の頻度は様々ですが、厳密には日常生活で二回以上てんかんの症状が見られた場合にてんかん発作と診断します。治療の対象となるのは、目安として三ヶ月に二回以上の頻度で発生する発作です。
治療
1.特発性(原発性)てんかんの場合
抗てんかん薬による薬物治療を行ないます。効果がない場合は薬の種類を変更します。すべての抗てんかん薬でも効果がない場合があります。
2.二次性(症候性)てんかんの場合
対症的な治療が必要になります。対症的治療とは、てんかんを起こす原因となる何らかの障害(脳腫瘍・脳炎・水頭症など)を治療することによりてんかんを治すということです。
注意と対策
<日頃からの観察が重要>
部分発作はその子の癖だと思われていたり、また気付かれないことが多いため、飼い主さんが発作に気付く時はほとんどが全般発作だと思われます。発作を見つけるためには発作の始まり方の観察が重要になります。
また気圧の変化が起こりやすい季節の変わり目にてんかん発作が出やすい、家に来客が来てドアのチャイムを鳴らすと発作を起こす、テレビの電源を入れると発作を起こすなどのその犬特有の癖がある場合もあります。
<治療の際、発作の履歴や前後の状況を詳しく伝える>
発作が起こってしまった場合には病院に行って、どんな症状か、どれくらいの時間続いたのか、過去の発作の履歴、前兆、何か食べたものはないか、などの情報を伝えることがその後の治療に役立ちます。
<てんかんの発作が起こっても慌てず対処を>
通常のてんかん発作で死ぬことはほとんどありません。てんかんで亡くなる例は発作が止まらなくなり数時間痙攣をしつづける様な状態に限りますのでもし発作が起きた場合でもあまりあわてなくて大丈夫です。痙攣発作で舌を噛むこともありません。発作中の犬の口に何かくわえさせたりするのは非常に危険です。痙攣がおさまるまで様子を観察するだけでかまいません。多くは1分以内、長いものでも3分と続かずに痙攣はおさまります。