いつも愛犬がお世話になっている動物病院。
診察され、処方されるお薬って一体どんなものなのでしょう?飼い主としては気になるところ。
今回はそんな動物病院の薬事情を獣医さん(テッツ犬猫病院 大角院長)に聞いてみました。
1.動物病院で使われる薬は一体何?
動物病院で使う薬の多くは人体薬です。
動物なんだから動物専用の薬を使いなさいという指示はあるようなんですが、なんでもかんでも動物用を作っても売れませんから製薬会社も一部の薬品しか作っていません。
大体、使用する薬の8割は人体薬で、仕入れる所も人間の病院と同じ医薬品の問屋から仕入れることになります。
棚卸の帳簿を見るとだいたい300種類くらいを常時使っているみたいです。動物病院って内科、外科、産婦人科、眼科に皮膚科なんでもやらねばなりませんから、薬の種類もおのずと増加します。

2.動物専用の薬
<動物専用の薬には何があるの?>
動物専用の薬はどんなものかというと虫下し類は専用のものを使用することが多いです。よく「虫下し下さい。」って言われますけど、あれは虫によって薬が違うのですね。条虫がいる猫に回虫の虫下し飲ませても全く効きませんしその逆もしかり。
最近、いろいろ効きますという薬も出てきました。しかし、いろいろ効く薬ってのは回虫と鉤虫に効く薬に条虫に効く薬を足しただけなので余計な薬まで入ってしまう分高額です。ですから同じ体重でも回虫だけでOKならば500円で済むものが1000円になってしまったり2000円になってしまったりします。
フィラリアの予防薬も動物専用で人間用はありません。
<優れている動物専用薬>
動物専用薬にしかなくて人間用には無い非常に優れた薬というのもあります。
アイボメックという本来は牛やブタの線虫を殺す薬なんですが、この薬ダニ類にも大変よく効きます。猫の疥癬なんぞは注射2回も打てば治ってしまうくらいです。
人が猫から疥癬をもらってしまった場合、効き目の悪い薬でゆっくりのんびりと治す事になります。以前、犬から疥癬をもらってしまった飼い主がなかなか完治せず、最終的に大学病院まで送られ治癒するまで1年を要した…なんてこともありました。(この薬は後になって人体薬に認可おりました)
<変わった動物専用薬>
中にはトンデモナイ高額の薬というのもあります。
犬に結構多い副腎皮質機能亢進症(クッシングシンドローム)に使う薬…冗談みたいに高額です。
錠剤100錠一瓶=仕入れ価格13万円也=1錠=1300円です。1錠が犬の体重10kg分に相当します。
維持には1週間で1回飲むだけですが、治療開始時には朝晩毎日飲みますから請求時に申し訳なく、ほとんど原価で出すようになってしまいます。
使用している病院は少ないですけどね。
3.薬の価格設定は?
人と違って決まりがありません。
1錠100円で仕入れた薬を120円で売ろうが200円で売ろうが1000円で売ろうが薬の価格決定は各動物病院に委ねられています。
これではあまりに料金の統一性がないのでこのくらいの価格という基準を作った方が一般消費者のためにいいのではないかと獣医師会が動いた事も昔あったようですが、公正取引委員会からの指導がありこの件については見送られたそうです。
人とは違い、処方料、処方技術料などを課さずに単純計算で1錠いくら、という価格設定がほとんどだと思います。
人では薬の価格は決められていて薬代の他にいろいろ手数料が高いです。動物病院の薬の場合、手数料が無い分薬代を人間よりも高く設定されています。
4.海外からも薬を調達
日本では売ってないけど海外にはあってその薬があればペットが助かる…そんな時は動物病院個人で薬を輸入します。輸入申請書などを書いて審査を受けると少量ならば海外の薬も購入可能です。
人体薬の輸入は厚生省の管轄(対応早い)で動物薬だと農林省の管轄(対応遅い)。
しかし最近では狂牛病が発生して以来、農林省は牛が原料に入ってないのが明らかでも動物薬は一切輸入を許可してくれません。人薬は輸入で大量に海外から入って個人輸入する場合もあるくるのにおかしな話だと思います。
最後に…
人間と犬のお薬の違いは分かりましたか?高価なものもたくさんあり分からないことが多いと思いますので、主治医とよく相談し、処方してもらうようにしましょう。