いよいよ、春本番。バラも休眠期から目覚め、つぶらな赤い新芽をつけはじめていますね。
冬剪定は終わりましたか?元肥は万全ですか?私はこの時期、中耕(植物の植わっている箇所を軽く耕す)をして、土に空気を入れるように意識しながら、コガネムシなどの幼虫などが潜んでいないか、土のなかをチェックします。中耕をすると、必ず庭のどこかに、カブトムシの幼虫かと思うような大きな幼虫を見つけることがあります。今年の啓蟄は3月5日ですね。今年は暖冬だったので、地域によっては、2月下旬から虫がでていたかと思います。また、中耕の際、根の張り方を見たり、普段は、地上部のみで判断している植物の状態を確認すると良いでしょう。
「庭の引き算」「新たな足し算」
バラを元気に育てるには、日当りと風通しが大切ですが、落葉樹の葉が張り出す前に、庭で大きく伸びた樹木の枝などは刈り込んでおきます。3月はこのような「庭の引き算」の作業が終わると、「新たな足し算」もしたいですね。植物のニューフェースを加えたくもあり、このふたつの一見矛盾するような作業が混在しますが、すでに植わっているバラを引き立てるような、脇役の植物を検討してはいかがでしょう。
バラの庭、今はまだ色彩の少ないグレーな状態ですが、一旦花が咲き始めれば、華やかな色彩が溢れます。美しい色彩で咲く花をさらに美しく引き立てるには周囲の植物の色彩も大切です。背後の壁や脇役の植物など、主役のバラを引き立てるバックドロップ(背景、劇場などでいうところの背景となる装置、背景幕)をどうするか、これが庭を「絵になるように」作る上で大変重要な課題です。
バラの咲く庭の色彩計画
グリーンとペールカラー(ホワイト〜ライトピンク)、目に優しい緑の庭
ホワイト系のバラが映えるように、バックドロップの植物で暗い背景を。
半日陰も大丈夫なゲラニウムが美しい背景となっている。
カラースキーム(色彩計画)
今から100年ほど前に誕生した「花のイングリッシュガーデン」では、庭のカラースキーム(色彩計画)が美しい庭づくりの大切なメソッドとされてきました。バラは存在感がパワフルなだけに、色彩の調和が大切です。
代表的なカラースキームのメソッドは、同系色(白花や銀葉を中心としたホワイトガーデン、赤花や銅葉を中心としたレッドガーデンなど)、優しいピンク色の色調を中心としたパステルカラー、黄色やオレンジ色などの反対色を使った補色対比、赤や黄色などのビビッドカラーを使ったホットカラーガーデンなど。
ダークピンクとビビッドカラーで
ペールトーンのパステルカラーで統一
色彩のコントロールこそ、センスの見せ所
私が世界で一番美しいと感じた英国ハンプシャーにあるモティスフォントガーデンは、オールドローズのピンクの濃淡を中心にしたカラースキームの庭です。バラ色といえば、ピンク。そんなバラの庭ならではの、ロマンチックな雰囲気があり、優しい色彩に心が癒されます。
統一感や調和(ハーモニィ)、反対色でインパクトやリズム感など、さまざまなカラースキームの基礎を意識した上で、自分流の色彩計画を作るのもよいでしょう。いずれの場合も、白いキャンバスから始める絵画と違って、バラの庭では、葉っぱの緑色が必ず基本にきます。その緑色との色彩調合をいかに巧みにコントロールするのかがセンスの見せ所ですね。
ホットカラー(赤やオレンジ、黄色の色彩)、引き締め役は銅葉のリグラリア
ウォームカラー(暖色系)のバラの海
吉谷桂子さんプロフィール
東京生まれ。英国園芸研究家、ガーデン&プロダクトデザイナー。
7年間の英国滞在経験を生かした、ガーデンライフを提案。
TV番組や雑誌等での企画、出演、講師を務める。
また、国際バラとガーデニングショウや東京ミッドタウンのコンランレストラン「Botanica」の植栽デザインを担当。
「吉谷桂子のコンテナガーデニング」(主婦の友社)他、著書多数。
著書紹介