
季節の移ろいを愉しむ風景としての庭、リビングの延長上に位置づける生活空間としての庭、そしてお手入れが苦痛にならない庭であること。このバランスのとり方が年齢とともに少しずつ変わるので、終わりが見えない庭造り。暮らし方、生き方が反映される庭造りの愉しみに、ずっと夢中です・・・。
春
裏庭のシャラノキの銀鼠色の芽が動き出し、北国に遅い春が訪れます。冬の間、雪から西側の外壁を守ってくれたオカメヅタ(ヘデラ・カナリエンシス)が、いつの間にやら、この場所を征服しそうな勢いです。そのうち家の中でオカメヅタが「やあ」と言うかもしれません。
足元にひっそりと咲くのは、シラー・シビリカ。とても小さなブルーの花は、庭の宝石のよう。
クリスマスローズ、水仙、スノーフレーク、足元にはアジュガ'チョコレートチップ'やプルモナリア、ムスカリのブルーが枕木の小道を埋めていきます。
新緑に、チューリップの'ブラックヒーロー'や'クイーン・オブ・ナイト'のシックな色も加わって、春の風景が完成。
満開とともに徐々に色味が淡くなり、枝先にふんわりと春を体現する仙台枝垂れ桜や、ガールマグノリア'アン'の魅力に、カメラを手に外へ出る回数も増えます。
プリムラの黄色や、すみれ、忘れな草、ペリウィンクルの白やブルーを集めて。早春を彩るお花は、どの子も可愛くて・・・。
道路に面した東側の庭で、ヤマボウシの芽吹きとともに開花する雪柳。塀越しに細い腕をたくさん伸ばし「おいでおいで」をしているようです。
他にもライラック'マダムレモネイ'や'センセーション'、それからビバーナムやバイカウツギ、コデマリ・・。宿根草と違って、豪雪から枝や花芽を守ってあげる必要があるので、結構手がかかるのですが、大好きな花木は小さな庭に毎年増えていきます・・。
バラの季節
6月に入ると、ガレージの壁面で野ばらが咲きはじめます。リビングに面したパーゴラではランブラーローズの'ポールズ・ヒマラヤン・ムスク'がピンクのグラデーションを楽しませてくれ、バラの季節の始まりです。旺盛な伸長力と棘の鋭さには、管理面で辟易させられるものの、退色とともに白に近づき、最後はまるで桜のようにはらはらと散る様子がなかなかロマンチック。
裏庭では白のつるばら'群星'がオカメヅタをバックに咲いています。ジギタリス、セージ、キャットミント、ゲラニウム、オルレヤ、アストランチア。たくさんの草花が競演し、この時が一番華やかになります。
特に好きなのは白いバラ。マダム・アルディ、ウィンチェスター・カテドラル、グラミス・キャッスル、アルベリック・バルビエ、雪あかりなど。
そして花持ちが良いローブリッター、華やかなウィリアム・モリス、他にもヘリテージなど、ピンクのバラも愛おしくて・・・。
夏
7月の半ば。八重のカシワバアジサイ'スノー・フレーク'や一重の'スノー・クイーン'が裏庭で咲き始めます。斑が美しいガクアジサイ以外は、'アナベル'のように、白ばかり集めています。ライムグリーンへの退色がまた楽しみのひとつ。北側の玄関前も、この時期には寄せ植えが少し形になってきます。
スカシユリ、少し遅れて鉄砲ユリ'トライアンフ'があちこちで咲く真夏。東側の通路沿いでは、庭を造り始めた当初からの株、ロシアンセージやブロンズフェンネルがゆらゆら。美しい葉を持つテマリシモツケ'ディアボロ'をバックに、夏を謳歌するこの組み合わせが、毎年頼もしく感じられます。
秋から冬へ
ノリウツギ'ライムライト'やシュウメイギク、ミケルマスデージー、ライム色に退色したアナベルが、沈んだ秋の色調に色を加えるようになると最後の宴、といった風情です。
野ばらの実が真っ赤に色づき、玄関周りや裏庭の塀のナツヅタが長く伸びた蔓を露にし始める頃、いよいよ冬支度が始まります。切妻屋根から滑り落ちる雪や、積雪の量が尋常ではないので、支柱を打ってよしずをぐるりと巻いて。これが毎年大仕事・・・。アメジストセージやマムが晩秋の庭を彩ります。
北国のこの地にも、静かに、時には荒々しく、聖夜が訪れます。ホワイトクリスマスを彩るのはリースやアレンジ。入手しておくサンキライやヒメリンゴ、木の実とともに、庭の常緑樹の葉を生かして、毎年いくつか作ります。雪に眠る庭を眺めながら、春からの庭仕事の計画もこの時期からのんびりと。長い、長い冬の始まり・・・。
プロフィール
Souさん
- 住まい
- 一戸建て
- ガーデニング歴
- 14年
- お気に入りの植物
- 木漏れ日を作る落葉樹、すみれ、野ばら、あじさい、蔦。どこへ行くことになろうとも、これだけは植えたい、と思う植物です。
- ホームページ
- 穏やかな、日々の暮らし
編集部より
冬には雪に包まれる地域でガーデニングをしているSouさん。四季の移ろいが、鮮やかに表現されています。季節ごとの植物を慈しむように大切に育てている様子がうかがえますね。
時節柄、色づいていく秋の風景に心惹かれます。そして、冬には雪の下で植物たちが春の訪れを待っています。冬があるからこそ、花や緑あふれる季節はより輝いて見える、そのようなことを改めて思い起こさせてくれるお庭でした。