体を使って気持ちを伝える
人間は言葉で会話をしますが、言葉を持たない犬たちはそれに代わるボディランゲージという体を使った言語で、気持ちを相手に伝えています。
人間の言語は国によって異なりますが、犬のボディーランゲージは国境がなく、世界共通という便利で素晴らしいものです。そのルーツは犬の祖先である狼から受け継がれており、今も日常的に使われています。体を使って気持ちを伝える
幼い頃に親兄弟やその他大勢の仲間と過ごした犬は、このボディーランゲージをしっかり学んでいるので、新しい環境でもすぐに新顔の犬たちと仲良くなることが出来ます。
一方、乳離れも早々に親から離されて展示ケースで育った犬は、この言語を知らなかったりうまく使えず、犬同士の付き合いに支障をきたします。もともと本能に組み込まれたものなので、上級者と過ごすことにより徐々に理解できるようになってきますが、スキルアップには充分な時間と監督が必要です。
ボディーランゲージの中で喜怒哀楽の感情を表す以外に、社会生活をおだやかに、無用な争いごとを避けるために発達した行動をノルウエーの動物学者、トゥリッド・ルーガス女史が「カーミング・シグナル」と呼び、今も研究が続けられていています。
人間と違う意味合いもあるシグナル
カーミングシグナルの中でも最も日常的に見られる行動として、叱っているのにそっぽを向いたりあくびをしたりと、反省の色が伺えない行動があります。
人間社会でこんな反応をされたら、態度が悪いとさらに叱られてしまいますね。でも犬の言葉であくびは眠いだけでなく、落ちついて欲しいと思った時にも使われ、そっぽを向くのも自分を落ちつかせたいためにとる行動です。このサインが出たら、反省してるんだなと認めてあげ、叱るのもそこで切り上げましょう。
叱られているのに大あくび
もう怒らないで、落ち着いて。
恐くてたまらないよ。
叱られているのにそっぽを向いている
ちゃんと反省してるよ。
もう許してほしいな。
しつけやトレーニングの最中に、何度も身震いをすることがあります。これもカーミングシグナルのひとつで、もう飽きた、気を鎮めたいなどの意味があります。トレーニングについつい熱が入ってしまうこともありますが、このサインが出たらしばらく休憩させてあげましょう。
トレーニングの最中に何度も身震い
もう飽きちゃったよ。
かんべんして。
呼んでもさっさと来ないことに飼い主がイライラしてしまうと、まっすぐ来ないで大きく弧を描いたり蛇行しながらやって来ることがあります。これも飼い主を怒らせて面白がっているのではなく、怒らないでというメッセージが込められています。
ゆっくり歩きながら飼い主のメッセージを待っているので、犬に対して脅威を与える仁王立ちでなく、視線を外して横を向く、しゃがむなどすれば、犬も戻ってきやすくなります。 新しい犬と出会った場合も、同じような近づき方をします。これは体の側面を見せて、敵意がないよというアピールになります。
呼んでも、のろのろと蛇行しながら近づいてくる
怒ってるの?
機嫌をなおして欲しいな。
これらは悪い意味に誤解されやすいサインなので、人間の場合と違うのだと認めてあげてくださいね。また、あくびや身震いなどは生理的に発せられることもあるので、見極めが必要です。
誤解するとよくないサイン
誤解するとよくないサインとして、噛んだあとにそこを舐めてくる行動があります。一見するとすまなさそうで、反省してるんだなと思われがちですが、実際は「逆らったらただじゃすまないぞ。」という強力なアピールです。犬との上下関係が逆になってしまっていると見られるサインなので注意が必要です。
噛んだあとに手や足をなめる
ぼくのいうことを聞かないと、
次はもっとひどい目にあうよ。
フレンドリーな犬に多いサイン
他に、散歩中に突然伏せてしまう行動があります。疲れたのかなと思ってしまいますが、スフィンクスのようなポーズは、こちらへやって来る犬と仲よくなりたくてとる行動です。
フレンドリーな犬によく見られる行動で、伏せることによって相手を落ちつかせ、鼻や口の回りをペロペロなめて敵意がないことをアピールします。黒っぽい犬は顔の表情が相手に伝わり難いことを本能的に知っていて、この舌を出すサインを使う頻度が多くなります。
伏せる+鼻や口の周りをなめる
怖がらないでこっちへ来て欲しいな。
きみと友達になりたいよ。
犬同士のあいさつに見られるボディランゲージ
ボディランゲージは他の犬との交流で、いろんなパターンを見ることができます。
顔見知りの犬と出会った場合
・情報を得ようと耳が前を向く
・においの情報を嗅ぎ取ろうとしている
おや?あの子は…アイリスちゃんかも。
・期待と緊張で耳と尻尾が持ち上がる
・よくみようと首を伸ばす
あれはもしかしてオーヤマくん?
・尻尾はしなやかに振幅も大きい
・軽快な足取り
・高く上げていた首が下がり、お辞儀のように上下する
・目を細め、表情が穏やかになる
・口角をひいて嬉しさをアピール
やあ、こんちは。元気だった?
・嬉し鳴き
・遊びに誘うポーズをとろうとしている
・耳の付け根が下がる
・お尻ごと飛んでいきそうな尻尾
やっぱりオーヤマくんだわ
互いにお尻のにおいを嗅いで相手の状態を調べる
体の側面を相手に見せながら近づく
あいさつも済んで、さぁ、遊ぼう!
危険な出会い(※しっぽを振っていても要注意)
よく、しっぽを振っているので近づいたら噛まれそうになったという話を聞きますが、これが雲行きの怪しいときのしっぽで、嬉しい時とは微妙に動きが違います。
このような場合、相手を注視する姿も緊張の度合いが高く、微動だにしないことが多いです。しっぽも振られますが、嬉しいときと違って振り幅が小さく小刻みになります。
あの子はぼくの知ってる子かな?
・じっと相手の目を見る
・首を高々とあげ、微動だにしない
・首から腰までの毛が逆立つ
・尻尾は高い位置にあげたまま
・四肢を踏ん張って背を高く見せようとする
困ったことに犬によっては好戦的な者がおり、さぁ、こっちへ来い。やっつけてやると闘いを期待して待っている場合がありますので、しっぽや耳の状態をよく観察してください。 判断がつかない場合は近づかないことです。
・全身で好意をアピール
ねぇ、きみはどこから来たの?
・目を細めることなく正面から見据える
・鼻にシワが寄る
・まったく無表情の場合もある
・待ち焦がれたように鼻を鳴らすこともある
・小刻みに振られる尻尾
早く来いよ、やっつけてやる。
・恐怖と防御で耳が倒される
・尻尾がさがる
・股間に巻き込むこともある
・驚いて後ずさる
・距離を見定めて飛びかかる
明確な拒絶
・鼻をなめて相手をなだめる
・相手の意思を尊重して立ち去る
・目線をそらす
・体の側面を見せて敵意がないことをアピール
友達になれなくて残念だよ。
・歯を見せて唸っているが、攻撃が目的ではない
・来ないで欲しいことを全身でアピールしている
・リードの届く範囲がテリトリーになっている。
(このエリアに入って近づいたり、横切ったりしない)
向こうへ行ってくれないか。
ボディランゲージは犬の種類、性格、おかれている環境や出会う相手、場所によって判別が難しいのもあります。これも観察を続けていると、だんだんと分かってきますので、犬たちの発するメッセージを見落とさないようキャッチし、彼らの気持ちを理解してあげてください。
ボディランゲージに気付かないでいると、犬はサインを出すことを諦めてしまって、自分の判断で行動をとるようになってしまいます。言うことを聞かない子の原因に、このようなすれ違いが多く見られます。
飼い主がシグナルを確実に受け取ってくれるんだと分かると、信頼関係も深まり、コミュニケーションがとりやすくなります。犬語の分かる人は、他の犬からも好かれます。(身近にそんな人が少なからずともいるはずです。)
楽しい愛犬との生活に、これからも観察を続けてみてください。
飼い主に対して見られるサイン
愛犬がよく行っている行動に対して飼い主さんは、「これは何を伝えたいんだろう?」「意味があるのかな?」と疑問に思ったことがある方がいると思います。時には犬の行動に対して甘えられていると思い、誤った対応をしている方もいるかもしれません。
今回は3つの行動から、何を思ってやっているサインなのかをご紹介します。
顔をかく
顔をかいていると、顔が痒いのかなと思いがちです。しかし、これは気持ちを表している行動でもあるようで、前足でかく時と、後ろ足とで気持ちが違ってくるようです。では、その違いについて見ていきましょう。
前足
前足の場合は、「不満」を表していることがあります。
構ってもらいたいと思うあまりヤキモチをやき、「自分に注目してほしい」と意思表示をしているのです。長い時間、構ってあげないとわんちゃんは無視されたと思い込んでしまうために、このような行動を起こすと考えられます。
後ろ足
後ろ足は「満足・嬉しい」といったプラスな気持ちを表しています。
美味しいご飯を食べた後や思う存分遊んでくれたり、構ってくれた後に表現していることがあるようです。
この気持ちを飼い主さんは、素直に受け止め「どういたしまして」と声をかけてあげると愛犬とより良い関係を築けるはずです。
その他、眠いときに顔をかく場合もあります。
頻繁に体の一部をかく場合は、病気の可能性があるので注意が必要です。体の一部をかいているときに考えられる病気をご紹介します。
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体をこすりつける
愛犬に体をこすりつけられると、甘えられていると思ってしまい、つい可愛がってしまうことありませんか?愛情表現としてやっていることもありますが、実はそうでない場合も…。 大きくわけて3つの意味があるようです。
甘えたい
まず1つ目の意味として「甘えたい」というような愛情表現があります。満足して幸せを感じる時や構ってほしいときに、見られます。その際、撫でてあげるなど、愛犬の気持ちに応えてあげましょう。
しかし、甘やかしすぎは注意してください。初対面の人に体をこすりつける場合は、犬流のあいさつの仕方のようです。
相手を見下している
2つ目の意味としては、「この中で一番偉いのは自分だ!」といった相手を見下していることがあるようです。
自分よりも下に見ている相手の頭や顔に、体をこすりつけることで、においをつける習慣があります。寝そべっている飼い主さんの頭や顔に体をこすりつけてきた場合は、しつけの見直しが必要かもしれません。
野生の本能
3つ目は「野生の本能」です。散歩に出かけた時や外出したとき、地面に体をこすりつけていることはありませんか?これは「野生の本能」で獲物に気付けれないよう、強いにおいを体にこすりつけることで、自分のにおいを消して近づこうという習性が残っていることが考えられます。
見つめてくる
犬が見つめてくるのには「敵意」「要求」「愛情」といった3つの意味があります。このしぐさにはあまり良くないイメージの「敵意」という場合があるので、愛犬の表情や行動をよくみて見分けることが大切になってきます。
敵意
家や飼い主さんに慣れていない、知らない人がいて怖いなどの理由で緊張してしまい、それが敵意になってしまうことがあります。唸っていたり、歯をむき出しながら見つめてくる場合は確実に敵意を持っています。それは、見てすぐわかる人がほとんどだと思います。じっと見つめるだけで、目線を外そうとしない場合にも同じことが言えます。
要求・愛情
「要求」と「愛情」はともに落ち着いた様子で、こちらを見つめています。
その行為が高じると、要求の意味になることがあります。その後、首を上下に動かしたり、尻尾を振ったり、興奮して口を開けながら見つめるしぐさをします。具体的には「お腹が減ったから、ご飯ちょうだい!」「一緒に遊んで!」「散歩に行きたいから、連れてって!」といった要求があるようです。
さいごに
いかがだったでしょうか?今まで愛犬がやっていたしぐさには、紹介してきたような意味や表現があったようです。甘えられていたと思っていたしぐさが、実は勘違いで誤った捉え方をしていた方もいるかもしれませんね。
愛犬と仲良く楽しく過ごすには、まず愛犬が普段どんなしぐさや行動をとっているのかを知ることが大切です。時には病気のサインかもしれないので、注意深く見てください。優しく時には厳しくしつけることが、愛犬と飼い主さんの関係を良くしていく1番の方法かもしれません。