犬の分娩と親離れ(ブリーディングその3)

いざ、愛犬が出産をする時どのように対処すればよいのしょうか?
今回は「分娩」〜「子犬の親離れ」についてご紹介します。

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目次

1.分娩・難産

<出産時の入院>

犬の出産を病院で入院して行うことは非常にまれです。不慣れな場所で、飼い主がいない状況での出産では、子供の面倒を全く見ないばかりか、生まれた子供を食べてしまう母犬が少なくないからです。病院で出産するのは、あらかじめ難産が予想され、帝王切開を行うことが決まっている場合が多いです。

<陣痛〜破水〜胎児の排出>

陣痛は間隔をおいて周期的にきます。排便のポーズにちょっと似た感じで、ちょっときばっては休み…というのを繰り返します。疲れている場合や、体重の増加が激しい場合は寝ながらいきむ場合もあります。何回かいきんでいるうちに陰部内部に水分を含んだ半透明の膜状のもの(羊膜)が見えてきます。この膜が破れると破水となります。膜が破れてから胎児が出てくる場合と破れずに膜ごと胎児が出る場合もあります。通常は膜状の物が見えてから60分以内に胎児が排出されてきます。

<胎盤について>

胎児が出た後は緑色の胎盤が排出されてきます。子宮と胎盤は血液を交換し合っているので、胎盤がはがれるときに多量の出血が認められるはずです。胎盤は排出後母犬が食べてしまうのが普通ですが、胎盤を食べるとまれに下痢を起こすこともあるのでブリーダーの中には胎盤を食べさせずにとってしまう人もいます。一方では胎盤が栄養になるという説もあります。病院での帝王切開の場合、胎盤は一切食べさせませんが、別に支障はありません。
胎児の体位としては頭から出てきても尻尾から出てきても正常の体位です。一頭当たりにかかる出産の時間は5分で済む場合もあれば60分以上かかる場合もあります。次の分娩が始まるまで30分〜3時間の間隔があります。

<病院に連絡が必要な時>

いきんでいるのに子供が生まれない場合は難産かもしれません。次のような場合は動物病院に連絡してください。

* 羊膜がでているのに1時間以上たっても子犬が出てこない
* 1頭目がまだ産まれないのに緑の液体が陰部から出てきた(2頭目以降は緑の液体が出てもかまいません)
* まだお腹の中に胎児が残っているのに4時間以上待っても次の胎児が出てこない
* 胎児の体の一部が出ているのに引っかかって出てこない
* 出産予定日から3日以上経つのに分娩しない

<帝王切開について>

いきんでいるのに胎児が産まれないとき、帝王切開するか自然分娩にするかの選択は通常胎児の心拍数をもとに決定します。正常の胎児の心拍数は250以上です。胎児が弱ってくると心拍数が減少してきますので230以下になるであれば帝王切開の適応となります。200以上の心拍数があるうちに帝王切開を行うと生存率はかなり高いです。150を割るとかなり危険です。

出産前の検診で、難産になりそうなことがわかった時は、最初から帝王切開で産んだ方が胎児の生存率は高くなります。また、帝王切開後も妊娠は可能です。

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2.子犬の処置

子犬が生まれたら、通常の場合、母犬はへその緒を噛み切り、子犬の体をなめて乾かします。しかし、次の場合は、人の手で補助をしてあげる必要があります。

・ 母犬が分娩で疲れてしまい、へその緒を切ったり子犬の体をなめることができない
・ 生まれた子犬が鳴き出さない(仮死状態の可能性)

補助の手順は下記の通りです。

<へその緒を切る>

へその緒を切るもし子犬の顔に膜がかぶっているようであれば除去します。へそから数本の血管が出ているはずです。俗に言う「へその緒」です。へその緒が切れていなければ、子犬から4〜5センチほどのところで切ります。手でひちちぎろうとすると短くなりすぎる場合がありますので、必ずハサミ等を使ってください。通常、出血はほとんど無いはずですが、へその切れ端を糸で結ぶか、洗濯ばさみ等で挟んでもいいでしょう。子犬の呼吸がしっかりしていて体力的に余裕があれば、へその緒の出血部分を強くつまんでいるだけで1分ほどで出血は止まるはずです。

<子犬の体を乾かす>

へその緒が切れたら、乾いたタオルで子供の体をこすります。この時点で子犬が鳴き出せば問題はありません。

<子犬が鳴き出さない場合>

子犬の気道や肺に羊水が残っていると、息を吸うことができずに酸欠で死んでしまいます。
鳴くことができないで口をぱく…ぱく…ぱく…と開けているようでしたらこの可能性があります。

その場合の対処は、タオルで子犬をくるみ、お腹を下向き(うつ伏せ)にしてしっかりと持って、(飼い主さんの)両腕を伸ばして頭上からゆっくり振り下ろします。ちょうど剣道の面の動きを下向きにゆっくりやる感じです。この動作で遠心力を利用して肺、気道に残っている羊水を排出します。決して勢いをつけて思いっきり振ってはいけません。ぶんっと振り回すのではなく、ぶーんという感じでしょうか。

★振り下ろす際の注意
・ 勢いあまって子供を飛ばしてしまわない
・ 振るときに、周辺の物にぶつけない
・ 頭部をしっかり包みこみ、首の脱臼を起こさない

子犬の鼻に口をつけて羊水を吸い取るという方法もありますが、初心者ではゆっくり振った方が成功率が高いと思います。

気道の羊水が排出できたら、子犬をくるんでいるタオルで体をこすってやります。全身びしょびしょに濡れているので全身の水気を拭き取り、乾かすような気持ちでリズムをつけてこすってください。この“こする動作”は人工呼吸と似た作用があります。子犬がピーピーと鳴き出した後は母犬にまかせていいのですが、鳴き出せずにまだ口をぱく…ぱく…とさせているようであれば、鳴けるようになるまでこすり続けます。

完全に体が乾ききっても呼吸がうまくできないようであれば、異常児の可能性も考えられます。1時間以上マッサージを続けても蘇生しない場合は、残念ながら子犬の命はあきらめるしかないでしょう。

3.産後

<産後の痙攣(母犬)>

出産後に母犬が低Ca(低カルシウム血症)により発熱、痙攣を起こす時があります。その時はすぐ動物病院へ!注射により症状が改善します。

<初乳について>

分娩して2日目くらいまでの間に、母乳中に高濃度の免疫グロブリンが分泌されます。免疫が高いこのお乳を初乳といいます。
初乳が飲めなかった子犬は病気に対する抵抗が弱いため、病気になりやすい子になってしまいます。少量しか母乳が出てなくても1〜2日目の母乳は必ず飲ませてください。その後は人工ミルクでも大丈夫です。

<離乳食について>

離乳食は生後1ヶ月くらいから与え始めます。子犬用の缶詰や、ドライフードをお湯で柔らかくしたものに犬用のミルクを混ぜるのが一般的です。(牛乳は乳糖という成分が含まれており、それを分解できずに下痢をする場合が多いので与えない方がいいでしょう)
離乳期間中は母乳で半分くらい栄養をもらえますので、あまり離乳食の回数を多くしなくても大丈夫です。

【参考・離乳食のスケジュール 】
4週目…離乳食を与え始める(母乳と離乳食の両方で育てる)

6週目…離乳食のみ与える(母乳無しでも十分に生育可能)

4ヶ月まで…離乳食を1日3回

4ヶ月を超えたら… 離乳食を1日2回

離乳食に慣れたら…少しずつ固い食事へ移行

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4.親離れ

<子犬の親離れについて(子犬の社会化)>

一番良いのは、子犬を生後4ヶ月まで母犬のもとに置くことです。社会性を獲得する時期が生後4ヶ月までなので、それより前に親兄弟から離されると、社会性が欠如したコミュニケーションがうまくできない犬になってしまいがちです。

他の犬を見ると吠えて困る、他の人や犬を極度に怖がる、攻撃性が顕著…などの困った行動は子犬の社会化期を適性に過ごせなかった犬に多いです。成長してからでは社会性を身に付けるのは難しいと言われています。多くの子犬は1ヶ月半くらいで親元を離れるようですが、できればなるべく長く親元に留めておきたいですね。

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最後に…
命の大切さ、出産・子育ての大変さがおわかりいただけたでしょうか。愛犬が出産をすることになった時はぜひ参考にしてくださいね!

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