1.メス犬の発情
<発情の周期>
メス犬の発情周期(発情が終わってから、次の発情までの期間)は6〜12ヶ月です。一般的に、メスの発情は春と秋の2回だと思っている人が多いのですが、1年中いつでも発情期は来ます。
年に2回発情を迎える場合が多いのですが、年1回でも正常です。1年以上発情が無い場合は無発情となり、何らかの異常を抱えている事になります。
<発情期における出血のしくみ>
発情期は陰部から出血するので飼い主がそれと気付きます。人間の生理では排卵が終わり着床しなかった卵子が排泄されるときに多量の出血を伴いそれを生理と呼びますが、犬の場合は全く仕組みが別です。機能性出血などと呼ばれますが、これから卵子を受け入れるべく子宮の筋肉や粘膜が発達してきます。
10kgくらいの犬の子宮は通常ボールペンの芯程度なのですが、発情期は3〜4倍に太くなり、長さも数倍に伸びてきます。そこからじわじわっと血液が出てくるので薄い少量の出血があるわけです。排卵前の出血なので本来、犬のこの出血を生理と呼ぶのは間違いですが、便宜上そう呼ばれる事が多いですね。
2.交配
<排卵と交配のタイミング>
メス犬の発情による出血が始まった日を1日目とすると、9日目頃に排卵が起きやすいと言われています。その後卵子が受精可能になるまで2日必要です。成熟した卵子は2日間ほど受精が可能です。これは他の動物に比較して大変長いです。
犬の交配は、出血開始後10日目〜14日目の期間に複数回交配する方法が一般的によく行われています。
出血開始後の日数を数える以外に排卵を知る手段として、以下の兆候が判断の目安にされます。
・ 雄犬を許容するようになる。
・ 陰部が腫れ上がり硬く腫れていた陰部が柔らかくなる。
また、膣粘膜の細胞診(細胞を検査する)という方法でも排卵を知ることができます。
排卵があって卵子が成熟したところに生きた精子があれば受精が行われます。犬の精子の膣内生存期間は最大で7日くらいなので、メス犬の妊娠可能な期間は最大7日間ということになります。
珍しい事象ですが、この7日間のうちに複数のオス犬と交配した場合、異父兄弟が産まれる事もあるのだそうです。兄弟なのに純血種と雑種が同時に産まれる可能性もあるのです。
<交配に適した年齢は?>
通常、生後6〜12ヶ月で初回の発情を迎えます。交配する場合は2回目以降の発情から可能になります。おおむね5歳(人の年齢に例えると40歳くらい)までが交配に適した年齢です。それ以降の妊娠も可能ですが、子犬に先天疾患の発症率が上昇したり、子犬の数が減るため難産になりやすいです。
<交配させたい場合はどうやって相手を探すの?>
オスとメス双方を飼育している場合は、放っておいてもある程度は妊娠可能です。
メス犬を飼っている場合は、ペットショップやブリーダーに、相手のオス犬をお願いする事になります。交配料は3万円前後が一般的なようですが、オス犬の血統によってはかなりの高額になる場合もあるようです。また、交配料の代わりに産まれた子犬を何頭かショップに渡す「子返し」という方法もあります。
メス犬に出血が始まって発情期が来たと思ったら、一度ショップに相談すると、メス犬を連れてくる日時を指定されるはずです(オス犬に出張してもらうと、これは雄が緊張するためなのか失敗することが多いです)。散歩で知り合った同じ犬種同士で交配も可能ですが、多くは失敗に終わります。うまくいったらラッキー程度に考えたほうがいいでしょう。
3.不妊の対処法(オス犬に異常が無い場合)
<交配時期が不正(適正でない)の場合>
出血が確認でき、出血が始まってから11日目と13日目に交配しているのに妊娠しない場合は、2日ほど遅くしてみます。早くすると成功する場合もありますが、確率的には遅くした方が成功率は高いようです。
<交配時期が不明の場合>
発情出血が少量だったり陰部の腫れがほんのわずかだったりするメス犬もいます。この場合は動物病院で膣粘膜の細胞診(細胞を検査する)によって予測可能です。
これはスメア検査と呼ばれますが、現在発情前期か発情のピークなのか、終わったのかなどがおよそわかります。 ただし、何日後に排卵が来るかなどまではわかりませんので、発情前期と出たらまた2〜3日後に検査し、ピークになっていたら交配をし、まだ発情前期ならばまた検査を繰り返します。
<人口授精ってできるの?>
犬でも人口授精は可能です。雄犬の精液を採取する際、量が採れればいいというものではなく、3段階あるといわれる精液をすべて採取するのがポイント。受精そのものは意外に簡単です。
人工授精の場合は出産頭数が少なくなる傾向にあり、1頭のみの妊娠などの場合は難産になりやすいです。
これらの対処をしても妊娠しない場合は排卵障害やホルモン異常などの不妊要因が考えられますが、人の不妊外来のような診察は通常犬では行われていません。
最後に…
「かわいい子犬の赤ちゃんを見てみたい」、「今飼っている犬の子孫を残したい」、そう思う飼い主さんもいることでしょう。しかし、ペットである犬を繁殖させるということは、母体の生命はもちろん、生まれてくる生命の全責任が飼い主に発生する、時として非常に大きなリスクを伴うことを忘れないでください。
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