猫と水の関係

水は生きていくうえで欠かせないものですが、その水と微妙な距離を置いている動物がいます。そう、猫ちゃんです。今回は猫と水の関係について考えてみたいと思います。

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目次

猫の先祖

つい近年まで家猫の先祖が何者なのか決定的な裏づけが取れず、専門家らを悩ませてきました。
2007年、遺伝子の研究が進んだお陰で、遠い先祖まで遡ることが可能になり、サンプルとされた家猫979匹のミトコンドリアDNAを解析した結果、5頭のメスのリビアヤマネコが先祖であることが判明しました。

リビアヤマネコは中東地域の砂漠地帯に棲んでいて、 家猫と殆ど変わらない姿をしています。

彼らの習性や体質は現在の家猫に受け継がれています。

どうして水が嫌い?

リビアヤマネコが砂漠で生き抜いていけるのは、 一日の大きな温度差、強い陽射しや乾燥、少ない水や 食物に耐えられる体が備わっているからですが、 雨が降らないので濡れることに対する耐性がありません。

皮脂も犬に比べて少ないため、水を弾く力が弱く、一旦濡れるとなかなか乾かず、犬のように豪快に体を振って水を飛ばすことも出来ません。
乾かないと体温が奪われたり、手入れに膨大な時間を要してその間、感覚器官である毛先が役に立たなくなるため、濡れる状態を猫はひどく嫌います。

いつも体がきれいなわけ

猫は単独で生活するため、敵や獲物に自分の存在を 知られると非常に不利となります。

そのため、 常に体をなめて汚れを落とし、臭わないよう注意を払っています。

犬になめられると結構臭いますが、猫がなめても臭いません。体の臭いを消したり、怪我の外傷をなめて治してしまう実例から、猫の唾液には天然の抗生物質となる酵素が含まれているのではないかと考えられています。

泳ぐ猫

トルコ原産の品種ターキッシュバンは、トルコ東部にあるバン湖で泳ぐ姿を撮影されたことから、水泳好きな猫として知られています。現地はかなり暑い場所であるため、飲み水を求めたり、浅瀬にいる魚や水を飲みにやって来る小動物を狙うために水辺にいることが多くなったのが、水との親和性が高くなった理由として考えられています。

ターキッシュバン

画像検索してみますと、泳いでいる画像は確かにありますが、同じ画像のサイズ違いや同時に撮影された別アングル程度で、彼らがレトリバー犬のように喜び勇んで水に入るというわけではなさそうです。

猫の泌尿器系トラブルに注意

先祖が砂漠生活で培ったのは、少ない水で生き抜く力です。血液中の老廃物を体外に出す手段が排尿ですが、尿を出すためには相応の水分が必要です。猫の腎臓は、少ない水でも高濃縮された尿を作ることが出来るように進化しているので、中に含まれる老廃物も人や犬に比べ多くなります。それでどうしても臭くなってしまうのです。

マグネシウム・カルシウム・リンなど、ミネラルのバランスが崩れたり、尿のpH値が片寄ると尿結石が出来やすくなります。尿が酸性に片寄るとシュウ酸カルシウム結石、アルカリに傾くとストルバイト結石が形成されやすくなります。ペットボトルで売られているミネラル豊富な天然水も、与える際には注意が必要です。

メスに比べオスは尿道が細く、生殖器の構造上尿道が狭く曲がった部分があるため、石が詰まりやすくなります。

それまでトイレの失敗がなかったのに、粗相をしたり、腰を落として落ちつきなくウロウロする、トイレに度々入っていくのに排尿のあとがない、トイレの中で鳴いたり、悲鳴を上げる、尿の色が赤っぽい、排尿後のシーツにキラキラ光る細かい結晶があるなどの場合は泌尿器系のトラブルが疑われます。できるだけ早く病院に連れて行って検査を受けましょう。結石が尿道に詰まってしまい排尿が出来なくなると急性腎不全から尿毒症を引き起こす危険が出てきます。

尿の濃度を下げるには水分が必要です。
一日に少しずつ食事を摂る猫に置き餌となるドライフードは手軽で便利ですが、決定的に水分が足りません。もともとあまり水を飲むことに積極的でない猫に水分を取らせるにはウエットフードが好都合です。ウエットフードはすぐに食べないと痛んでしまうため、食べ残したときのロスが大きいですが結石の予防も期待できますので、ドライフードとうまく併用していただきたいです。

食事場所にはいつも清潔な水を置きますが、設置場所を複数にするのも、 ものぐさな猫に有効です。
猫はヒゲや頬が濡れるのを嫌いますので、器も飲みやすさにこだわってみましょう。
寒い時期は冷たくない程度に暖め、夏場は冷やしたり氷を ひとかけ入れると口当たりも良くなります。
スポイトやシリンジで少しずつ、直接飲ませる方法もあります。

清潔な水を用意しているにも関わらず、猫が結露した窓や、風呂場に入って浴槽や椅子、タイルをなめている姿を目にすることがありますが、これは先祖からのなごりです。
リビアヤマネコは、早朝の温度差によって生じる草の露や岩の表面についた結露で水分を補給していますので、それが飼育下でも行なわれているのです。
なめる性質を利用した給水ボトルは埃や虫が入らないので便利です。

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室内飼育やケージで飼われることも増えたため、運動不足も要因のひとつです。
運動すれば喉も乾きます。キャットタワーに登ったり、おもちゃなどで遊んであげて体を活性させることが必要です。

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トイレ設備も重要です。
トイレ環境が気に入らないと、入るのが億劫になり、排尿回数が減ります。砂の量が多過ぎる、少な過ぎる、砂粒が指の間にはさまるなどの理由で入りたがらないケースもありますし、砂自体が嫌いで、裂いた新聞紙や直接シーツにしたがる子もいます。
体格の大柄な猫ではフードつきのトイレで天井に頭がつかえたり、中で向きを変えるのに狭かったりもありますので、新たにトイレを購入する際は充分な検討が必要です。
トイレ本体や砂は気に入ってもらえるまで、色々と試すことになりますが、より良いトイレ環境のために理解してあげましょう。
掃除が行き届いていないのもNGです。複数飼育でトイレを共用する場合は、こまめにチェックをしましょう。

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犬は積極的に運動をするので、呼吸で失われた水分補給と体温を下げるために、たくさん水を飲んでくれますが、猫は一日の大半を寝て過ごし、生命維持に必要な最小限の水で満足してしまいます。
近年は猫の完全室内飼育が増え、外で体験するような刺激もなく、運動も限られてしまいますので、飼い主さんが工夫して、猫ちゃんの健康維持につとめてくださいね。

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