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犬のアレルギーと貧血(免疫が害を及ぼす)

外から侵入した異物や、体内にできてしまった異物をやっつけてくれる免疫ですが、良いことだけではありません。アレルギーや貧血を起こすこともあり、場合によっては命にかかわります。

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目次

外から侵入した異物や、体内にできてしまった異物をやっつけてくれる免疫ですが、
良いことだけではありません。
アレルギーや貧血を起こすこともあり、場合によっては命にかかわります。
今回はそんな免疫のアレルギーについて見ていきましょう。

1.免疫の過剰反応 ~アレルギーが起こるしくみ

免疫システムが過剰に働きすぎて様々な障害を起こす疾患をアレルギーといいます。
食物では大変多く見られる小麦のアレルギーを例に取ります。

<アレルギーが起こるしくみ >
(1)1回目の抗原摂取 (抗原とはアレルギーの起因物質のことで、アレルゲンともいいます)

飼い主が食パンの耳を犬に与えたとしましょう。
小麦の蛋白の主成分グルテンが体内に入ります。通常蛋白は腸内でアミノ酸に分解されてから吸収されますが、下痢などをして腸の粘膜が荒れていたりすると大きな蛋白のまま体内に吸収されてしまい、アレルギーの原因になりやすいと言われています。
異物であるグルテンをマクロファージという食細胞がキャッチして「異物が入って来たぞ」という情報を伝達役のヘルパーT細胞を経てBリンパ球に伝達します。

Bリンパ球はその情報によりlgE(免疫グロブリン)を造ります。産生されたグルテンlgE(グルテンに結合する免疫グロブリン)は体内に散らばり肥満細胞に付着します。つまり、次におなじ異物が入ってきた場合、同じ経路をたどってlgEを作るよりも、あらかじめ局所に散っておき、速やかに外敵をやっつける準備をするためです。この段階ではまだ症状は出ません。

数週間後、お母さんがお昼のうどん(数センチ)を犬に与えたとします。うどんは小麦でできていますから2回目の抗原摂取になります。
肥満細胞に付着していたlgEと小麦のグルテン蛋白が結合して抗原抗体複合体になります。

これがスイッチとなり肥満細胞から化学物質(炎症性メディエーターなどと呼ばれるヒスタミン、セロトニン、ロイコトエリンなど)が放出されます。

「1型アレルギー」は即時型アレルギーとも呼ばれ、通常は食後数時間で痒みが出てきます。激しいものでは顔面がぱんぱんに腫れることも珍しくはありません。

2.アレルギーが急激に起こる"アナフィラキシーショック"

<アナフィラキシーショック>

アレルギー反応が急激に表れると"アナフィラキシーショック"とよばれる状態に陥る事があります。虚脱と血圧の低下から死に至る例もあるほどです。
注射や蜂の毒などでよく見られますが、食事で起きることもあります。

ある動物病院では、年に数頭、ワクチン注射でこのアナフィラキシーショックに遭遇するそうです。注射をして3~5分ほどで吐き気が出たり、力が入らなくなり歯茎の色がどんどん白くなって力が抜けていきます。この場合は緊急の対処が必要です。
また、ワクチン後数時間を経てから顔が腫れる事があります(ダックスフンドに多い)。あまりに腫れるのでまるで違う犬種のようになってしまいますが、これもアレルギーの一種です。こちらは命にかかわることはほとんどありません。

また、犬のノミアレルギー性皮膚炎は尾の付け根に好発し、強い痒みを伴います。梅雨~夏の時期は要注意ですね。

そして、ほとんどのアレルギーの症例は皮膚疾患で来院しますが、実はそれだけではありません。
「1型アレルギー」の標的臓器は皮膚、腸管、呼吸器なので、下痢の原因が実はアレルギー性の腸炎という犬も実際よく見られます。グルテンアレルギーの場合は小麦が入ってさえいればなんでも反応しますので、かっぱえびせんをひとかけ食べただけでも重度の下痢になったりする場合もあります。
呼吸器のアレルギーは犬では少ないです。

<自己免疫性疾患 ~貧血・血小板減少症など~>

自分の細胞そのもの(異物ではない)を免疫システムが攻撃する場合もあります。仲間割れというか、同士討ちみたいなものですね。
自分の細胞を標的とみなす病気を"自己免疫疾患"(免疫介在性疾患)と呼びます。

自己免疫性溶血性貧血 自己免疫性血小板減少症 といった病気がもっともよく遭遇します。

<自己免疫性溶血性貧血>
免疫システムが赤血球を攻撃するので血管内において赤血球が破壊され、貧血を起こします。ゆっくり進む場合や急激になる場合と様々ですが、黄疸や血色素尿、ふらつく、元気消失などの貧血症状が見られます。放置すると貧血から死に至る事が多いです。

<自己免疫性血小板減少症 >
免疫システムが血小板を攻撃するために出血が止まらなくなります。血小板が無くなると体中でどっと出血が始まり急死する事も多いです。この病気になった犬は体中にアザがでることがあり、見た目で診断がつく事もあります。血小板の数が少なくなる病気はあまり多くはないので貧血よりも診断が容易です。

いずれの病気もなぜ免疫システムが自分の細胞を破壊するのか原因はよくわかっていませんが、マルチーズやシーズーに多い傾向にあります。
免疫抑制剤で治療しますが、なかなか反応しないものや、一時治っても再発を繰り返す事も多いです。
特に血小板減少症は致死率の高い病気です。

<天疱瘡(てんぽうそう) >
その他、よくある自己免疫疾患としては皮膚の細胞が標的になる天疱瘡という病気があります。目の回りや鼻の周囲によく発症して酷いと全身が化膿してボロボロになってしまいます。軽いものでは本来黒かった鼻の色が薄くなっていく事があります。
この病気も色素細胞に対する免疫反応だと考えられています。

3.アレルギーの原因物質を特定するには?

(1)血液検査
アレルゲン(アレルギーの起因物質)を調べるための血液検査があります。これは血液中のIgE(免疫グロブリン)を測定するものが多く、項目は36種類~100種類ほどまで検査できます。しかし、検査項目数が多いため大変高額な検査になり、最低でも2万円はかかります。また、検査結果の感受性、特異性ともに低いため、結果が必ずしも正解ではない場合が多く、参考程度にしかなりません。検査結果が陰性だからといって必ずしも大丈夫とは言えないし、陽性と出たけれども大丈夫という場合があります。

また、アレルゲンになる可能性のある物質は数百万もの数があるとも言われていますが、それに対して検査できる数はごくわずかです。愛犬のアレルゲンである物質が、検査した数十の項目のうちに入っているとも限りません。

(2)スクラッチテスト・パッチテスト
スクラッチテストやパッチテストという、毛を刈って皮膚に直接抗原を接種して腫れ具合で鑑別する検査があります。こちらの方が精度は高いです。しかし、検査キットが市販ではありませんので、この検査を行っている病院はごくわずかです。

(3)アレルギー専用食を試してみる
食事性のアレルギーに関してはアレルギー専用食(アレルギーの原因となる食材が入っていないもの)だけを2ヶ月間与え、それで症状が軽快したならば食事性アレルギーと診断できます。その後怪しいと思われる食材を一つずつ与えていくと安価かつ正確に食事性アレルギーの原因を診断できることがあります。

食事性ではないアレルギーの原因の多くはハウスダストや花粉です。これらの物質は除去するのが大変難しいです。

4.アレルギーの治療法と予防法

<アレルギー専用食の意味>
「アレルギーと診断されたのでアレルギー専用食に替えたけれど、アレルギーが治らない」という飼い主さんが多くいます。多くの人はアレルギー専用食を食べると(食事性の)アレルギーが治ると思っているようですが、そうではありません。ちょっと難解かもしれませんが。

アレルギー専用食は、それを食べたからといって痒みが軽くなるというものではありません。アレルギーの原因になりそうなたんぱく質(たとえば牛肉・鶏肉等)を含んでいないというだけです。
しかし、せっかく犬が食べたことの無い材料で作ったドッグフードでアレルギーが起きないようにしているのに、おやつが原因でアレルギーを起こしてしまう場合があります。アレルギー専用食は、その専用食と水以外は一切与えないというのが前提です。ジャーキーなどのおやつを与えながらアレルギー専用食を食べさせても、なんの効果もありません。

また、一度摂取した食事性のアレルゲンは1~2ヶ月の間痒みを発症させるので、食事療法が無効かどうかは2ヶ月間の観察が必要です。

<アレルギーの治療法>

(1)アレルゲンの除去
アレルギーの原因であるアレルゲンを除去するのが理想ですが、多くの場合、原因が特定できないか、特定できてもハウスダストなどで除去不可能なものがほとんどです。アレルギーの原因は通常一つではなく何種類かが混合していて、症状が悪化していることが多いです。例えば、ハウスダスト、ノミ、小麦、牛肉、卵、ブタクサの花粉、スギ花粉に対して痒みが出る、という具合です。この場合、ハウスダストや花粉は除去できませんが、ノミの除去を行い、食事をアレルギー専用食にすることで、アレルギー症状は(完全に止められはしなくても)症状の改善は見込めます。

(2)内科的治療
薬で症状を抑える方法が一般的ですが、免疫を抑える薬を使用して一時的に止めることしかできません。薬を飲んでいる間しか効果が出ないので、薬が切れて2日もすれば、また痒みがでてくるのが普通です。人間では抗ヒスタミン剤が効果的ですが、犬や猫にはこの薬がほとんど効果が見られず、副腎皮質ホルモン(ステロイド)が治療のメインになります。

副腎皮質ホルモンはとても効果があるのですが、多くの量を持続して投薬すると副腎皮質機能亢進症という病気になってしまい、毛や皮膚が薄くなったりお腹が膨らんだり肝臓が悪くなったりします。そのため、アレルギーの内科療法は、一時薬を使用して症状が軽快したら、薬を減らすか投薬を休み、なるべく投与する薬の総量を少なくします。一旦投薬を休んで軽度の痒みがでても多少は我慢をし、症状が悪化してきたら投薬しまた休む。この繰り返しで治療を行います。

<アレルギーの予防法>

(1)なるべく単一の食事を与える
通常アレルギーの症状が出てくるのは1歳前後からです。なるべく単一の食事にしておくと、アレルギーの原因を診断するのが容易になります。人間の食べ物をいろいろもらっている場合、摂取するたんぱく質の数が多くなるので診断も難しくなる上、複数のアレルギーを持つようになる可能性もあります。

(2)下痢をしたら、絶食するか、お粥を与える
下痢時に食べた物が食事性アレルギーになる場合が多いので、犬が下痢をした時には絶食するか、たんぱく質の摂取を制限します(肉や魚類は与えず、お粥を食べさせるなど)。

最後に…
今現在はアレルギーでない愛犬も、将来アレルギーを発症する可能性はあるのです。日頃から愛犬の食事には十分注意し、人間の食事やおやつなどを安易に与えたりしないようにしましょう。

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