犬のエキノコックス

最近、なにかとテレビで話題となり、病院でもよく質問を受ける機会の多いズーノーシス(人畜共通感染症)ですが、そのうち最も日本人にとって脅威な病気がエキノコックス症ではないでしょうか。

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目次

エキノコックスとは?

エキノコックスは体長4ミリ程の寄生虫で、サナダ虫などの条虫の仲間に分類されます。
この寄生虫は捕食者(きつね)被捕食者(ねずみ)の関係をうまく利用しどんどん増殖していきます。きつねの腸内に寄生するエキノコックスは、その卵を便とともに外界へと排出します。その卵を食べたネズミの体内で孵化し、肝臓で子虫入りののう胞を無数につくり、いつかきつねに食べられる日を待ちます。これが別名、多胞条虫といわれる所以です。
きつねに食べられると、エキノコックスは晴れて成虫となり消化管内に寄生します。終宿主であるキツネや犬がエキノコックスに感染しても肝臓に嚢包はつくらず、腸の中での普通の寄生虫と同様な症状しかしめしません。ただし、糞便中には多量の虫卵を排泄します。

エキノコックスの病害

エキノコックスは成虫となるきつねを含む犬科の動物での害は下痢など、それ程でもありません。恐いのはねずみのように肝臓でのう胞を形成した場合です。このねずみと同じようになるのが虫卵で汚染された水や草を食べるなど、何らかのきっかけで感染してしまった牛、豚、そして人なのです。
犬科以外の動物に感染した場合は中間宿主と呼ばれ、エキノコックスの幼虫は犬に食べられるのをひたすら肝臓で待つことになります。多くは野ネズミ→キタキツネという循環が北海道での普通のサイクルです。
野生のキタキツネのエキノコックス感染率はかなりの高率で、その便には虫卵が含まれますので水に流されたり、山菜に付着したりして人間にも感染することがあります。
人に感染した場合、エキノコックスは大人で10年、子供で5年かけてじわじわと肝臓にのう胞を作っていきます。
相手は虫ですから肺や脳にも移動する場合もあり、このことから悪性の肝ガンと誤診されることも多かったのです。
自覚症状がないうちに肝臓が虫の巣になってしまう。末期では正常な肝細胞は残らず、肝硬変と同様になり肝機能不全から死亡します。
治療法としては生体肝移植などの処置が必要でしょうから多くは助かりません。

エキノコックスの分布

今までは北海道のきつねの寄生虫とされてきたエキノコックスですが、近年、家庭犬でも確認されるようになってきました。その家庭犬が北海道から本州へと移入してくれば、本州での流行も時間の問題だといわれています。北海道から年間の犬の移入数は約7000におよびます。関東地方でも今年エキノコックスの発症例が報告されました。

駆虫・予防

人において、のう胞を形成してしまった場合、対処法は可能なかぎり病巣の摘出です。放置すると、9割が死亡します。
犬の場合は駆虫薬で駆除が可能です。プラジクアンテルというサナダムシの駆虫薬が使用されますが、これは一般的に市販されている虫下しとは別物ですが、何処の動物病院でも手に入ります。ノミ条虫の時に使用される薬です。
夏休みにキャンプなどで北海道を犬連れで訪れた後などは、予防的に薬を投薬しておくと、万が一犬が感染しても、飼い主に感染する心配はなくなると思われます。

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