ズーノーシスのひとつでもあるQ熱

ズーノーシスのひとつでもあるQ熱について、簡単に述べてみようと思います。飼主の皆さんも名前はテレビなどで、この変な名前くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか?

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目次

Q熱とは?

1.名前の由来

この名前の由来は、1935年にオーストラリアで原因不明の熱性疾患(Query Fever)が発生し、その頭文字 QをとってQ熱となったようです。後の研究でその原因菌がリケッチアの一種、コクシエラ菌だということが判明しました。(リケッチアは細菌とウイルスの中間のような存在です。)
その後、世界中に蔓延し、1987年にはわが国でも発見されるようになりました

2.原因菌:コクシエラ菌(coxiella burnetti)の感染経路

この菌が宿主となるのは、犬猫をはじめ牛豚などの家畜、ノウサギ、きつね等の野生動物、鳥類、人など多岐にわたります。
動物間の感染には糞や流産した胎児、や羊水、乳汁そしてダニの糞からの媒介が関与していきます。

3.症状

犬、猫を含む各種動物では感染後、14〜26日の潜伏期の後、軽い発熱がでる程度です。つまりそんなに大事には至らず、感染しているものの症状はでない、不顕性感染の状態となります。問題となるのは動物が妊娠している場合です。
菌は胎盤を好み、流産の原因となります。したがって流産した胎児、胎盤は主な感染源となります。
人間への感染は、感染動物由来の羊水、胎盤、糞便、乳汁から感染します。海外では未殺菌の牛乳からの感染例もありますが、わが国では、殺菌方法の改善により、市販の牛乳からの感染はまずありません。
潜伏期間は2〜4週間です。その症状は風邪に類似しており、悪寒を伴う急な発熱、頭痛、倦怠感、関節や筋肉の痛み、熱は2週間ほど持続する場合がほとんどです。重症例では胸の痛み、や発咳を伴います。

診断

診断はPCR法といって、菌の遺伝子DNAを見つけ出す方法と病原体の培養、分離、そして血清中の抗体の上昇を確認するELISA法等があります。

治療と予防

テトラサイクリン系の抗生物質によく反応します。Q熱に感染しての死亡例はまれです。多くは2週間程で自然治癒し、本人も風邪かな・・で済んでしまっていることが多いようです。犬猫のコクシエラ菌の保有率は10%程度、また動物からの感染ということで、一般の人よりもわれわれ獣医師の感染の確率は20%とかなり高めです。

これに対し、一般のひとは3%。しかし、人から人への感染はきわめてまれといわれています。欧米では人用Q熱のワクチンもありますが、副作用が強く、一般的には用いられていないようです。家庭における注意点は糞便のきちんとした処理と、流産した場合には不用意に胎児にさわらない。毎月のダニ予防です。

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