
「飼っているうさぎが食べなくなってすぐ死んでしまいました」または「元気はあるが、1週間くらいほとんど食べない」これはよく聞く話です。同時に、うさぎは非常に小さな糞しかしてなかったり、糞をまったくしていなかったか下痢をしていたということがほとんどです。これは、何らかの原因で、正常な腸の活動(ぜん動)が弱くなったり、停止したために起こったのです。このため、胃腸の内容物が移動せずに止まってしまい、食欲が低下します。この状態が「胃腸内容停滞」です。
【原因】
うさぎの胃腸は次のような理由で通過障害を起こします。
● 不適切な食事、低品質のフード(高炭水化物、低繊維)
● 毛球症…自分の毛をたくさん食べてしまう(換毛期のブラッシング不足、ストレス)
● 消化できない新聞紙やタオル、ビニール、カーペットをかじって飲みこんでしまう
● 飲水量が減って、胃の内容物が硬くなって通過障害を起こす
● 食欲不振により胃腸のぜん動運動が低下した
● 肥満による腸のぜん動運動の低下
【症状】
次のうち、いくつかの症状が表れます。
1.食欲不振(まったく食べなくなる場合も多い)
2.元気消失(腹痛のため、じっとしてうずくまる)
3.便が小さくなるかまったくしなくなる。下痢の場合もある。または便がつながっている。
4.鼓張(胃内や腸内にガスがたまって、おなかが張っている状態。急速に悪化してショック死する場合もある)
【診断】
1.症状によって推測
2.触診…やさしく入念な触診にて、胃内容の確認や鼓張の有無が判断できる。
3.X線検査(レントゲン)…胃腸内の状態が確認できるので、とても有意義。
4.消化管造影…バリウムを飲ませて定時的にX線撮影して、胃腸の通過を詳しく調べることができる。
治療
1.野菜や果物など食べられるものを与え、何も食べない時は専用の流動食を強制的に与える。
2.飲ませるか、点滴で十分な水分を摂取させる…脱水症状を改善し、胃腸内容が通過するのを助ける。
3.腹部マッサージ…固まった胃の内容をほぐしたり、腸の運動を刺激することができる。
4.胃腸運動促進剤の投与…多少食べている場合は内服薬で、まったく食べない時は注射で投与する。
5.軽度の毛球症の場合、潤滑剤として鉱物油を飲ませて排泄を促す。
6.以上の内科療法で改善しない場合は、手術で胃内容物を摘出する場合がある。
予防
1.ブラッシングを頻繁に行って、口に入る毛の量を減らす。または毛球予防剤を与える。グルーミング(体をなめる行為)過多にならないように、遊んであげる時間を充分にとる。
2.ビニールや布などの異物をかじらないように注意する。
3.普段から食用や便の状態をよく観察して、変化があったら早めに対処する。
4.牧草を充分に与えて繊維不足を防ぐ。
5.おやつ(特に小麦で作られたクッキータイプ)やフードを制限して肥満を防ぐ。
6.食事内容を急に変更しない。