猫の栄養学(1)カルシウムについて

「猫にとってカルシウムは摂れば摂るほどいい」と思い込んでいる飼い主さんはいませんか?子猫の販売と共にカルシウムをセット販売するペットショップもあります。しかし、カルシウムの摂りすぎは非常に危険です。

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目次

    猫の栄養学(1)カルシウムについて

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    「猫にとってカルシウムは摂れば摂るほどいい」と
    思い込んでいる飼い主さんはいませんか?
    子猫の販売と共にカルシウムをセット販売するペットショップもあります。
    しかし、カルシウムの摂りすぎは非常に危険です。

    1.カルシウムの役割

    生体でのカルシウムの一番重要な役割は筋肉の収縮、弛緩です。筋肉を動かすにはカルシウムが絶対に必要というわけ。また、神経の伝達にも関係しています。

    心臓の筋肉もまた同じく収縮にはカルシウムが関連していますのでカルシウムが低下すると心臓が動けなくなります。つまり「カルシウムなくしては生きてはいけない」ということです。

    <カルシウムの貯蔵>
    カルシウムは生きていく上で非常に大事な物ですから、不足した場合に速やかに補わなくてはいけないので、身体には多くのカルシウムが貯蔵されています。おわかりですね?カルシウムの貯蔵庫は骨です。骨の主成分は燐酸カルシウム。血液中にカルシウムが不足すると喉の部分にある上皮小体という分泌腺からホルモンが分泌されて骨のカルシウムを血液中に放出します。これが継続的に続くと骨がもろくなり、簡単に骨折を起こすようになります。

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    2.カルシウムとリンのバランス

    カルシウムの腸管からの吸収にはビタミンDが必要ですが、日光に当たらないと人ではビタミンDの不足から低カルシウム血症を起こす場合があります。しかし現在の猫がビタミンD欠乏から低カルシウム血症を起こすことはまれで、多くはリンの過剰摂取で起きると考えられています。

    <リンとは?>
    筋肉や骨をつくる原料となる、身体に必要なものです。リンは主に肉類にたくさん入っています。

    <リンの与えすぎを防ぐには?>
    リンは肉類に多く含まれているので肉の多給を避けます。プレミアムフード(※)を与えていれば問題ないですが、鶏肉やかつお節などの多給によってはリンの過剰摂取が起きます。

    ※プレミアムフードとは…より理想に近い栄養を含んだペットフード。多くのプレミアムフードが成長の段階によって子猫用・成猫用などに分類されている。

    3.カルシウムの過剰摂取は膀胱結石を招く!

    <犬より猫に多い!栄養性二次性上皮小体機能亢進症>
    離乳期に粗悪な猫缶だけを与え続けたり、日の光に全く当たらず、ビタミンDが欠乏したりするとカルシウムとリンのバランスが崩れ、栄養性二次性上皮小体機能亢進症を発症することがあります。栄養性二次性上皮小体機能亢進症とは、栄養バランスが悪いのでカルシウムを補うために二次的に上皮小体が機能を活発にしてホルモンを分泌して骨のカルシウムを血液に放出するという意味の病名です。

    <栄養性二次性上皮小体機能亢進症の症状>
    全身の骨がもろくなり、背骨が圧迫骨折を起こすために背中の上部の変形が見られます。骨の短縮から地面を這うような歩行方法をするので見た目ですぐに診断できます。背骨の骨折から神経障害が生じて腸の運動が悪くなり便秘を起こす場合も多く、この便秘は生涯続く事が多いです。また、この病気は食事のバランスを良くすると回復しますが、骨折した部分はそのまま残ります。

    <カルシウムの過剰摂取は膀胱結石を招く!>
    しかし、カルシウムは摂れば摂るほど良いものではないのです。カルシウムを過剰摂取すると猫の場合は膀胱結石が多発します。

    <猫の尿石症(膀胱結石を含む)>
    結石は種類がいろいろあります。カルシウムの過剰摂取による結石はシュウ酸カルシウム結石、マグネシウムの過剰摂取による結石はリン酸マグネシウムアンモニウム結石(ストルバイト)です。
    猫の尿石症について詳しくは、症状から調べる 猫の病気(尿石症)をご覧ください。

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    4.プレミアムフードについて

    現在、プレミアムフードと呼ばれるもののほとんどは成長の段階による分類(子猫用・成猫用など)がしてあり、子猫用のフードは成猫用よりもカルシウムの量を若干増加してあります。子猫用のフードを与えながら、さらにカルシウムのサプリメントを添加するのは非常に危険です。

    成長期でのカルシウムの摂取の仕方はとても大切です。多すぎず少なすぎず、さらにリンとマグネシウムとのバランスをとることが重要です。「そんなの大変」と思われるかもしれませんが、プレミアムフードの子猫用ならばカルシウムとリンとマグネシウムのバランスがきちんとしているので、そのフードを与えるだけ。信頼のおけるフードならば他に余計な物を追加しない方が安全です。

    <マグネシウムについて>
    マグネシウムの役割はカルシウムと同じ、筋収縮に関与して働きます。割合としてはカルシウム2に対してマグネシウム1を摂取するのが理想です。マグネシウムを多く与えると尿石症に繋がるので注意が必要です。マグネシウムを多く含む食べ物としては海草類がダントツ。その他、肉類や野菜の中にも高マグネシウムのものがあります。

    猫の尿石症について詳しくは、症状から調べる 猫の病気(尿石症)をご覧ください。

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    最後に…
    猫の健康を守るためには、カルシウムに対する正しい知識と、信頼できるキャットフード選びが大切です。猫にサプリメントやおやつを与える時は十分に注意しましょう。

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